雑音

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 「今日の天気は、雨間が広まり一日傘が役に立つでしょう」 テレビの中のニュースキャスターが抑揚のある声でそんな事を口にする。今日は雨なのか。いや、今日も雨なのかと言ったほうが適しているだろうか。毎朝、欠かさず天気予報だけは見ているが、ここのところずっと雨が続いている様だ。だが、ちゃんと傘は買っていたから心配はない。 適当にチャンネルを変えていく。朝だという事でニュースばかりが放送されていた。どれも同じような内容を話している。新しいカフェがオープンした事、動物園に新しいパンダがやってきた事。数週間前の裁判の結果などだった。そんな情報は、俺にとってはどうでも良い事だった。画面の先に映るコーンスープより、逆に今手に持っているコーヒーを味わいたくなった。行った事のない他県の動物園など特に興味は湧かない。数週間前にあった裁判で懲役2年の有罪判決。どんな結果になっていたとしても、正直可哀想とも恨めしいとも何も思わない。だって他人だろ。 テレビを見る事に飽きてしまったので、俺はテレビを消した。真っ黒になった画面を数秒見つめた後、まだ残っていたコーヒーを喉に流し込み、流し台にマグカップを置きに行く。 次は何をしようかと考えたが、何もする事がないのでもう家を出る事にした。自室へ行き、前もって準備していた学校の鞄を持って玄関に向かう。靴を履き替え、玄関棚に置いてある時計を見ると6時半だった。予定通りの時間だった事を確認し、案外時間は早く進むものなのだな、とか考えながら傘立てからビニール傘を取り出して外へ出る。
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