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「では、これより捕虜奪還作戦について検討していきましょう。一応、参考程度に聞きますが……何か良い意見がある者はいますか?」
「はい! 正面から殴り込み!」
青蘭が勢いよく手を挙げて叫ぶが、竜胆はニコリと微笑んで告げる。
「無駄な負傷者を出すわけにはいきません。却下です」
「敵地に侵入して捕虜を救出する」
無難な提案をした杜若に、藤が難しい表情をする。
「それでは、相手の基地内部を把握するまでに時間がかかる」
「上のせいで一か月も無駄にしちまったからな」
クソッと、青磁が悔しげに歯噛みする。
その肩を宥めるように菖蒲が叩くのを見ながら、藤が言葉を紡ぐ。
「事は一刻を争う。こうしている今も、露草たちはひどい拷問にあっているかもしれない」
「白獅子の拷問って、すげぇやばいって聞いたことがある」
ハッと思い出したように青蘭が呟いた。
それに杜若が同意するように頷く。
「何でも拷問の仕方が三段階あるらしい」
***
その後も様々な意見が交わされたが、どれも決め手に欠け、勝算の見込みがないものばかりになってきたころ、竜胆が一つの提案をした。
『捕虜の交換!?』
隊員たちの声がそろった。
「それって、誰かが代わりに捕まんないといけないんじゃ……」
「助けに行くのに、他の誰かが捕まっては、意味がないのでは……!?」
困惑する隊員たちに、竜胆が救出作戦の詳細を語った。
捕虜三人を別の者と交換するよう、まず敵軍と交渉、交渉が成立すれば、解放された三人を連れて直ちに帰還。新たに捕虜となった者は、隊員が帰還するまでの時間かせぎと――そこからの脱出。隊員たちは帰還次第、脱出のサポートにまわる。
「――で、その捕まる役、誰がやるんですか」
葵の低い呟きに、隊員たちもひそかに頷く。
敵軍から自力で脱出できるほどの強者隊員がいたら、現に今自分たちの仲間が捕虜となっているはずがない。
「では、私が――」
意を決したように声を上げた瑠璃を、竜胆が遮る。
「拷問では、男性よりも女性のほうが、ひどい目に合うといいます。瑠璃くんはダメです」
では誰が、なんてもはや聞くまでもない。
実質、隊長の右腕ともいえる実力がある瑠璃ではだめ。
並みの隊員にできないことを、できる人物なんてもうこの場には一人しかいないのだから。
「……あんたがやるくらいなら、俺が行きます。」
おそらく初めから決まっていたのだろうが、葵は言わずにはいられなかった。
瑠璃の次に実力があるといえるのは葵である。
隊長にやらせるくらいなら自分が、と口を開いた葵だったが、その言葉に、竜胆は小さく微笑んだ。
「おや、君の口からそんな言葉が聞けるとは嬉しいですね」
「茶化さないでください」
苛立たしげに舌打ちした葵を見据えた竜胆の表情が、フッと真面目なものになる。
「ですが、ダメです。君には別に、頼みたいことがあります」
***
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