prologue

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***  結論から言うと、三日間で彼を落とすことはできなかった。  宣言通り、彼はいっさい抵抗することなく拷問に耐え、口をつぐみ続け、沈黙を貫き通して見せた。  さすが隊長格というだけのことはある。  まぁ、そう簡単に落とせるとは初めから思っていなかったが。  さて、ではこれからどうやって彼を落としていくか。  逃げようとする彼をいつまで手元に束縛し続けられるか。  それらを考えただけで、藜の口元に自然と笑みがこぼれた。 ***  竜胆が意識を取り戻したのは、見覚えのない強固そうな牢獄の中だった。  冷たい石台の上に、両手を頭上で拘束され、手錠の先は台上部の柵に取り付けられている。  首輪から伸びた鎖は牢獄の鉄格子に固定されている。  両足に取り付けられた鎖の先には鉄球が、無機質な床の上に転がっている。  拘束されているにも関わらず、あまり焦りは感じない。  拷問室から一転、一気に捕虜らしくなったものだと、思わず感心してしまうほどの余裕はあった。  所詮、殺さない程度に加減された拷問など、屈するに値しない。  さて、約束の三日はすぎた。  あとはここから、逃げ出すのみ。 ***  藜が竜胆をその手に落とすのが先か、竜胆が藜の下から逃げ出すのが先か。  お互い負けられない戦いの火ぶたが切って落とされた。    これは、隣国の敵対する二人の男が、後に互いに国を捨て、反旗を翻し国盗り合戦を繰り広げる、きっかけとなる始まり物語である。
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