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ずっと孤独だった私を彼が見つけてくれた。「可愛い」と言って、頭を撫でて、抱きしめてくれた。少しだけど一緒に楽しい時を過ごした。
なのに今、「ごめんね」という言葉を残して去っていく彼を私は黙って見つめている。
やっと出会えたのに。
ずっとその笑顔を待ってたのに。
お願い。
待って。
行かないで。
ずっと一緒にいたいよ。
好き。
大好き。
私がいくら叫んでも彼の耳には届かない。彼が去っていくのを、見つめることしかできない。
彼が視界から消えてしまっても、私は動けなかった。
彼が走って戻ってくる気がして。
息を切らして戻ってきて、「ごめん!」と言って、もう一度、抱きしめてくれる気がして。
動けなかった。
動いてしまったら、彼が戻ってきた時に私を見失う気がして。
動けなかった。
いくら叫んでも、彼が……。
あのランドセルの男の子が戻ってくるはずもないのに。
私はダンボール箱の中で、見えなくなった彼の背中に向けて叫んだ。
「ニャアアアアア!!」
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