Je vous remercie.

1/1
365人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ

Je vous remercie.

3ea42952-222a-474d-bab3-5373e997677c フレ「みんな! 今年も僕たちを応援してくれてありがとう!」 辰巳「お前はどこのアイドルのつもりでいやがんだ?」 フレ「何を言うんだい辰巳! キミからも是非読者のみんなに感謝の気持ちをだね!」 辰巳「はぁん? なんで俺が感謝なんぞしなきゃならねぇんだよ」 フレ「いいかい辰巳、僕たちは読者あっての存在なんだよ? 読んでくれる人が居なくなったら寂しいじゃないか」 辰巳「あー…そうだなぁ…」 フレ「だろう!?」 辰巳「読む奴が居なくなりゃあ、あの阿呆な作者にこんな場所まで引っ張り出される事もねぇって訳だな」 フレ「そうじゃない! どうしてキミはそう何でもかんでも面倒くさがるかな!」 辰巳「俺ぁ年末くれぇ家でゆっくりしていてぇんだよ」 フレ「……確かに…」(何かを思いついた顔 辰巳「ロクでもねぇ事想像してんじゃねぇ」 フレ「年末とお正月と…辰巳とふたりきりで誰にも邪魔されず愛の巣に籠るというのも…」 辰巳「妄想駄々洩れにしてんじゃねぇよ変態」 フレ「ああっ! 久し振りにキミの罵りが聞けるとは! もっと罵って!」 辰巳「馬鹿じゃねぇのか。ネタがねぇからって二番煎じが通用するはずがねぇだろ」 フレ「っ…それは僕に言われても困る! 文句なら頭の悪い僕たちの生みの親に言ってくれるかな!」 辰巳「まぁ、希望はねぇな」 フレ「そうだね…」 (しんみり フレ「ところで辰巳?」 辰巳「ああ?」 フレ「辰巳は、来年の抱負とかはないのかい?」 辰巳「ねぇな」 フレ「そんなにキッパリ言い切らなくても…」 辰巳「お前はあんのかよ?」 フレ「僕は――…毎日を素敵な旦那様に愛してもらえる一年にしたい!」 辰巳「今すぐに捨ててやろうか?」 フレ「酷い!」 辰巳「冗談はさて置き、まぁそうだな、今年一年ぶんの感謝くらいはしてやるよ」    ◆   ◇   ◆  フランス人のフレデリック《Frederic》が、日本人の辰巳一意(たつみかずおき)と付き合い始めてどれくらいの時間を過ごしただろうか。日本では、新しい年を迎えるために”お節料理”というものを用意するのが一般的だと聞いたフレデリックは、さっそくインターネットで情報を集め始めた。  ――ふんふん。節句の当日を静かに迎えられるように、あらかじめ料理を作ってお重に詰めておく、と…。  モニターに映し出された目にも鮮やかな日本料理の数々に、フレデリックは俄かに感動を覚えた。  ――これを作ったら、辰巳は喜んでくれるかな…。  ダイニングに鎮座した大きなアイランドキッチンにちらりと視線を向けて、フレデリックは嬉しそうに微笑んだ。  十二月三十一日。日本では大晦日と呼ばれるその日も辰巳は事務所へと顔を出していた。珍しく新年のカウントダウンが見たいなどという我儘を言い出さなかったフレデリックに一抹の不安を感じながら。  年末。辰巳のような職業の人間にとっては普段よりも義理事や何やらが増えて忙しい時期である。父親の匡成(まさなり)から組長の座を継いで一年。無駄だと思えるものは極力排除し、年寄りたちの反対を押し切ってビジネスとしての方向性も変えてきた。それでもまだ、辰巳にとって煩雑な付き合いは多い。  ――ったく、年末くれぇ静かに過ごさせろよクソが。  内心で毒づきながらも、たった一年で何かを変えられるとは辰巳も思っていない。これまで続いてきたやり方を変えるのには、それ相応の時間が掛かるだろうと。  不意にノックの音が響く。短く返事をすれば、開いたドアの隙間から事務所の慌ただしい雰囲気が騒めきとともに部屋へと流れ込んでくる。 「親父(おやじ)恒盛(つねもり)叔父貴(おじき)がお見えです」  ドアを開けたのは、匡成の代から事務長を務める設楽(したら)だった。大きな体躯の設楽に”親父”と呼ばれるのが、辰巳は未だに慣れない。 「親父って呼ぶんじゃねぇよ」 「いい加減慣れてください」 「無理だろ…」  ぼそりと呟きつつも、無駄なのは承知している。極道というのは、そういう世界なのだ。  諦めたようにガシガシと頭を掻いて辰巳は立ち上がった。 「適当な部屋に待たせとけ。すぐ行く」 「承知しました」  たいして付き合いもない相手であれば追い返してしまいたいところだが、恒盛は匡成の兄弟分でもある。おいそれと無碍に出来る相手ではなかった。  そして、話しが長い。  ――引退したんだったら挨拶に来るんじゃねぇよクソジジイ。  つまらないことをダラダラと話す恒盛が、辰巳は昔から苦手だ。  ともあれあまり待たせても面倒が増えるだけだと、辰巳は執務室を出た。恒盛の待つ部屋の前に設楽を見つけて歩み寄る。適当に酒でも持ってこさせろと言いつけて部屋へと入れば、でっぷりと太った恒盛が立ち上がった。いったいどれだけ酒を飲んだらそんなに腹が出るのかと、不思議に思う。 「おお一意、久し振りだな。匡成は元気か?」 「あの親父は殺しても死にゃしませんよ」 「お前もデカくなったな」 「図体だけだがな。叔父貴も、息災なようで何よりです」  恒盛にソファを勧め、辰巳がテーブルを挟んで向かいに腰を下ろせば設楽が姿を現した。その手の盆には、恒盛の好きな(かん)が乗っている。  設楽の差し出したお猪口に酒を注いでやれば、恒盛は旨そうに燗を煽った。 「はぁ、やはり日本酒は燗に限るな」  満足げに笑う恒盛へと曖昧に頷きはするものの、冷酒派の辰巳である。 「親父」 「あ?」  不意に背後から巨体を屈めて耳元に囁く設楽に、辰巳は手に持った徳利(とっくり)を置いた。 「フレッドがお見えです…」 「ああッ!?」  思わず大声が零れ落ちるのは、致し方のない事だっただろうか。咄嗟に胸元から抜き出したスマートフォンには、フレデリックからの連絡は来ていなかった。 「どうした?」  怪訝そうに問いかける恒盛に、辰巳は引き攣りそうになる口角をどうにか抑え込んだ。 「あー…いや、客っつぅか、まぁそんなとこだ」 「年末はどこも忙しいからな」  さして気にした様子もなく燗を煽る恒盛は、来たばかりで帰るつもりもないだろう。 「少し相手してくっから、設楽と好きにやっててくれ」 「構わんよ」  旨い酒に上機嫌な恒盛がひらひらと手を振って見せる。挨拶に顔を見せただけで、どうせたいした用事もないのはいつもの事だ。  部屋を出た辰巳は、今しがた出てきたばかりの執務室の前に見間違いようもない姿を発見した。  ドアノブに手を掛けようとしていたフレデリックが振り返る。その顔が見る間に綻ぶのが見てとれた。 「辰巳!」 「来るなら連絡くらいしろよお前」 「ふふっ、驚いてくれた?」  無邪気に微笑むフレデリックの頭へと、武骨な拳が落下する。 「こっちは忙しいんだよ阿呆」 「そんな忙しいキミのお手伝いをしようかと…」  頭を押さえながらゴニョゴニョと言い訳をするフレデリックに、ふと辰巳は閃いた。恒盛の相手を、フレデリックにさせればいいのだと。 「そういやお前、燗好きだったよな」 「日本酒かい?」 「ああ」 「お燗は美味しいよね。特にこの時期は」  嬉しそうに話すフレデリックは、冷酒は苦手だが熱燗は好きだという変わった趣向の持ち主である。さぞ恒盛と話も合うだろうと、辰巳はフレデリックを恒盛の元へと引っ張っていった。  ドアを開ければ、恒盛の向かいに座った設楽の眉が僅かにあがるのが見えた。それはそうだろう。まさか辰巳がフレデリックを伴って現れるとは思ってもいなかったはずだ。 「おお。あんた確か一意の祝言の時にもおった…フレ…」 「フレデリックです。フレッドと呼んでくださって結構ですよ、ミスターツネモリ」  爽やかに挨拶を交わすフレデリックに驚いたのは、恒盛よりも辰巳の方だっただろう。恒盛の言う通り、雪乃(ゆきの)との祝言の場での一度しか、フレデリックと恒盛が顔を合わせた事はない。まさかフレデリックが恒盛の名前を憶えているとは思わなかったのだ。 「フレッドか。確かフランス人とか言っておったな」 「ええ」 「酒は、いけるクチなのか?」  後半を辰巳へと問いかけるように言う恒盛は、滅法酒好きである。飽きもせずただひたすら燗を飲んでいる、辰巳からすれば変わり者の老人だ。  一方の辰巳はと言えば、同じ酒好きでもグラスが空くごとに違う酒を飲むだけに、ひたすらに燗を飲み続ける恒盛に付き合うのは少々気が進まない。いわばフレデリックは都合の良い生贄のようなものだ。  辰巳がどうしてこの場に自分を引っ張ってきたのかという事に、薄々感付いたフレデリックは恒盛の前に置かれた徳利へと手を伸ばした。 「ミスターツネモリは温めの燗がお好きなようですね。僕は、熱燗が好きなのだけれど…」 「おおそうか。…設楽、フレッドに熱いのを持ってきてやってくれ」 「俺は冷でいい」  ついでのように冷酒へとありつく辰巳をちらりと見遣り、設楽は無言で頭を下げて部屋を出ていった。  設楽の背中が消えたドアを見遣り、恒盛が口を開く。 「しかしそのナリで流暢なもんだな。確か客船の船長をしておったんだったか」 「覚えていてくださるとは光栄です」 「ははッ、あんたのようなのを忘れる訳がなかろうよ」 「日本ではこの髪の色はやはり目立ちますね」  はにかむように笑うフレデリックのそつのない対応に、辰巳は半ば呆れ、そして感心するしかなかった。常時ゲストを相手にするような仕事をしていたフレデリックにとって、猫を被ることなど朝飯前だとしても、辰巳には真似できない。  結局、フレデリックの話術にまんまと虜にされた恒盛を眺めながら、辰巳は設楽とともにゆっくりと酒を飲んだ。  これから行きつけの料亭へと場所を変えるという恒盛の送りを設楽に任せ、フレデリックとともにマンションへと戻った辰巳が目にしたものは、和室にいつの間にか鎮座した”炬燵(こたつ)”である。ご丁寧に皿に盛られたみかんが醸し出す何とも言えない違和感に、思わず辰巳が笑ったことは言うまでもない。  日本らしさを演出しているだろうことは理解できるが、やはり何かがズレているフレデリックである。 「どうしてそんなに笑うのかな!」  ぷっくりと膨れるフレデリックの肩を抱き、辰巳はリビングのすぐ隣にある和室へと移動した。  スイッチを入れれば程なくして暖かくなる炬燵に並んで足を入れる。 「しかしまぁ、今年はカウントダウンだなんだって騒がねぇと思ったら…」 「ふふっ、聞いて驚くと良いよ辰巳。なんとお節料理も用意してあるんだ」 「はぁ? お前が作ったのか?」  もちろんだと胸を張るフレデリックの髪を、辰巳は指先で弄んだ。 「って事は、当然年越しそばも用意してあんだよな」  腹が減ったと、そう言う辰巳の隣でフレデリックの動きが止まる。かと思えば、すぐさまスマートフォンを取り出して調べ始めるフレデリックに辰巳は苦笑を漏らした。 「正月の事しか頭になかっただろお前」 「ぅぐ…」  さっそく調べた記事に年越しそばの情報を見つけ、フレデリックはがっくりと項垂れた。さすがに、そばは常備していない。  辰巳を驚かせようと画策していたフレデリックが悔しさを噛み締めているその横で、当の本人が無造作にみかんへと手を伸ばす。手荒なわりに、辰巳の手で剥かれた皮は花弁のように美しかった。 「おら、いつまでも項垂れてんじゃねぇよ」  武骨な指がフレデリックの唇にむにりとみかんを押し付ける。開いた唇の隙間へと、辰巳はみかんをひと欠片放り込んだ。 「甘い」 「はぁん?」  なんの気なく呟かれた台詞に相槌を打って、辰巳は自らの口へとみかんを放り込んだ。 「ああ、確かに甘いな」  炬燵にみかん。まさに平和だと、辰巳は思う。 「もういっこちょうだい?」  甘えるような声音で囁くフレデリックを見れば、口を開けて待っているのだからどうしようもない。 「ちゃっかり甘えてんじゃねぇよ」 「なら、僕がキミを甘やかすのはいいのかな」  そう言って、フレデリックはみかんを咥えたまま辰巳の唇を奪った。  ぷちゅりと、瑞々しい音をたてて果汁が滴り落ちる。 「ん…、辰巳…っ」 「甘ぇな」 「ぅん…甘い」  綺麗に剥かれた皮に乗ったみかんもそっちのけで、重なったふたりの躰が倒れ込む。暖かな炬燵の中で、太腿に下肢を摺り上げられたフレデリックの口から吐息が漏れた。 「ぁっ、もっ……と…」  ふたりが大胆に動くたびに、ガタガタと大きな音をたてて揺れる炬燵に辰巳は苦笑を漏らした。穏やかな時間などつかの間、すぐさま互いを求めるような自分たちに、炬燵など邪魔なだけだとそう思う。  あっさりと炬燵を抜け出した辰巳は、フレデリックへと手を差し出した。 「こっち来いフレッド」 「…ん」  伸ばされた腕を掴み、引き寄せ、フレデリックを抱えたまま立ち上がった辰巳は大股に部屋を横切った。リビングのソファへと大きな躰を下ろす。 「辰巳…脱がせて…?」  めいっぱい甘やかされる気でいるフレデリックの額を小突き、辰巳は布地へと手を掛けた。上着も、シャツも、スラックスも、下着さえも取りはらう。あっという間に露わになった白い肌が、上気して仄かに赤みを帯びているような気がする。  裸身のままソファに横たわるフレデリックの額へと辰巳は口づけた。 「次はどうして欲しいんだ?」 「脱いで…僕をたくさん抱き締めて」  躊躇いもなく囁かれる言葉に誘われるように、辰巳はあっという間に肌を曝した。フレデリックの望むまま、目の前の引き締まった躰を抱き締める。  触れ合った熱い素肌にフレデリックが満足げな息を漏らした。 「このままずっと…キミの腕の中にいたい」  耳元に囁くフレデリックの下肢を、辰巳は膝で揺すりあげる。 「このままでいいのかよ?」 「んッ、ぁ、意地が悪いね」 「俺は、我慢できねぇよ」  欲情に濡れた辰巳の声が耳に心地良い。  言葉とともに後孔に指を飲み込まされて、フレデリックは僅かに背を撓らせた。狭い襞の浅い部分をゆるりとくじる指先は、慣らすというよりは快楽を与えるそれだ。敏感な場所を指先が掠めるたびに勃ちあがりかけたフレデリックの雄芯がぴくりと震えた。 「ァッァ、タ…ツミ…ッ良い…!」  快楽を与えるものの、達するには足りない刺激にフレデリックの腰が無意識に揺れる。くちくちと弄ぶような動きしかしない辰巳の指を、狭い襞が必死に食い締めた。 「も…っとぉ、ァッ、足りな…ぃッ」 「だったら締め付けてねぇでもっと緩めろよ。早くお前の中に入らせろ」  こつりと、額を合わせたまま囁く辰巳の声が低く濡れる。欲情した声音ごと、フレデリックは辰巳の吐息を奪った。 「んっ…ふ、早く……挿れて…、っ、僕の…中に、来て…ッ」  重ね合わせた唇の隙間から強請るフレデリックの後孔から、辰巳は指を引き抜いた。代わりに硬く反り返った雄芯を宛がう。唇を合わせたまま侵入を果たせば、フレデリックの長い吐息が口内に流れ込んだ。尾を引くような細い声を辰巳は口腔に呑み込んだ。 「ッ……フレ…ッド」  侵入を阻むどころか奥へ奥へと飲み込もうとする媚肉に食まれ、すぐにも持っていかれそうになる。幾度も肌を重ねたフレデリックの躰は、まるで辰巳のためにあるかのように心地が良い。  ぴたりと嵌まった熱い肉壁の中からずるりと雄芯を抜き出せば、腕の中で僅かにフレデリックの背が撓る。誘うような媚肉の蠕動に、辰巳はあっという間に欲望に流された。  辰巳が腰を打ち付けるたび、フレデリックの艶やかな嬌声が部屋を満たす。離すまいとするかのように、長い脚が辰巳の腰を捕らえていた。 「ァッ、イイ…ッ、…もっと…!」  もっとと言いながらも腰へと絡んだ足の力強さに動きを制限されて、辰巳は小さな舌打ちとともにフレデリックの躰を持ちあげた。座面に座り、フレデリックの腰を抱えあげる。きつく腰を抱き寄せれば、硬い腹の間で濡れた音が響いた。 「そっ…れ、ダメ…! いっちゃ…あぁ…ッ」  激しい突き上げと、腹の間で嬲られる屹立に躰が強張る。フレデリックは縋るように辰巳の頭を掻き抱いた。 「もぅッ、アッ、ぃ…くッー―…!」  どろりと腹の間に吐き出された欲に、辰巳は腰を抱いていた腕を解いた。淫猥な水音をたてて離れたフレデリックの腹筋を指先でなぞり、白濁を掬い上げる。  無造作に口許へと運ばれたそれに、フレデリックは目を見開いた。白濁を纏う指先を、肉厚な舌先が(ねぶ)る。 「辰…巳…」 「ああ?」 「そんな…こと…」 「嫌かよ?」  辰巳の問いかけに、フレデリックはふるふると(かぶり)を振った。嫌な筈などない。いやむしろ、フレデリックにとってはすべてを受け入れてもらえたような気さえした。 「辰巳こそ、無理をしてないかい?」 「無理だったらする訳がねぇだろ。馬鹿じゃねぇのか」  ふいと顔を背ける辰巳にくすりと笑みを零し、フレデリックは目の前の頬に口づける。 「おいしい?」 「不味いに決まってんだろこんなもん」 「えぇ…」  喜んでいたのもつかの間、あっさりと口許へと押し付けられた指先を、フレデリックは躊躇いもなく食んだ。 「痛ってぇな」 「辰巳が悪い…」 「は、そうかよ。だったらそうやってしゃぶってろ」  フレデリックに指先を食ませたまま、辰巳は抽送を再開した。  ぐ…っと一気に持ちあげられた躰が自重で落下した瞬間、最奥を肉傘に穿たれて、フレデリックはあっさりと辰巳の指を離すこととなった。 「アッ、アアッ!!」 「良い声だフレッド」  満足げに囁く辰巳の言葉さえ、フレデリックの耳には甘く聞こえる。黒く艶やかな髪を掻き抱き、フレデリックは耳元に囁いた。 「辰巳…っ、僕をキミのものにして…!」 「ばぁか、とっくに俺のもんだろぅが」 「もっと、ずっと…、一生僕のそばに居て…」 「お前以外に俺の面倒見れる奴がいる訳ねぇだろ。来年も再来年も、このさき一生、お前は俺のもんだ、フレッド」 END
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!