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その6.終局。そして……。
「あの~。皆さん~」
動けないようにと拘束済み。沙弥は鏡の前で三人に囲まれて、一枚一枚、衣服を剥ぎ取られていた。
ちなみにみんなは今も、衣装を着たままだ。
バニーガールとミニスカナース。そしてバブリーなボディコン娘という、セクシーだけど、とっても奇妙な組み合わせ。
「何かしら? ふふ」
「今度は沙弥が着る番だよ? うふふ」
にこやかに答える緒美と明穂。
言い出しっぺのあなたにも勿論着てもらうよと、笑顔が語っていた。有無を言わせぬ凄みがあった。
「そうそう。私達が着たんだから、沙弥ちゃんも、ちゃんと着ないとね。今、大人の格好にしてあげる。ふふふ」
智夏もなんだか楽しそう。
「み、みんなの笑顔が怖いのですよ! 怒ってる!? 怒ってるよね!?」
「怖くないわよ。それに私、怒ってないわよ」
緒美はそう言った。
「そうそう。怖くない怖くない。私は全然怒ってないよー」
明穂も気さくに言った。
「大丈夫だよ、沙弥ちゃん。私も怒ってないからね。こんなエッチな格好にさせられちゃったけど、怒ってなんていないよ」
智夏はちょっと根に持っているかのように言った。
三人が沙弥を拘束する力は強かった。絶対に離さないという、強い意思を感じるくらいに。
あああ、やっぱりみんな怒ってる! 絶対怒ってる! 沙弥はそう思った。ようやく、自分が調子に乗りすぎてしまったことを悟った。
果たしてこれで、何度目になるだろうか?
まったく、毎度懲りないものだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「んっひょおおお! ななな、なんですかこれはっ!?」
「うん。裸エプロンだけど? 略してはだえぷ」
しれっと、明穂が言った。
「それ、既にコスプレですらないのではっ!?」
「あらぁ~。よく似合ってるわよ。大人ね、沙弥」
にやりと笑う緒美。
「似合いたくない似合いたくない! こんなの似合いたくないよっ! あたしゃ変態ですかっつーの!?」
「そういうと思って、パンツはちゃんとはかせてあげてるじゃない。はいているから、恥ずかしくないよね?」
智夏がわざとらしく優しく言った。
「うん。なぜかあった、セクシーな黒いTバックね。それもまた、大人だよね」
明穂が、下着の種類を教えてくれた。
実は以前。沙弥は興味本意でお小遣いを貯めて、そんなものをインターネット通販で買ったことがあるのだった。
そして今日。みんなにタンスをがさごそと漁られて、秘蔵のエロ下着を発見されてしまったのだ! 何たる不覚!
「沙弥ちゃん、お尻がセクシーだよ~」
「いい具合に食い込んでいるね」
智夏と明穂が褒めてくれるけれど、沙弥は嬉しくない! ただただ、恥ずかしい!
「裸より恥ずかしいのです! 辱しめなのですこれはっ!」
「あらあら。辱しめというのは、こういうことを言うのよ? うふふ」
「ひゃんっ!?」
緒美が、沙弥の胸に何かをぺったりと貼りつけた。
「ななな、何ですか!? あたしのちっぱいおっぱいに何貼ってるですかぁ~~~!?」
「ああ、これはね。ハート柄のシールだよ~」
「これでOKだね。ちゃんと、大切なところは隠したから、もう恥ずかしくないよね。ほらほら沙弥ちゃん、鏡見て」
明穂と智夏が、とっても親切に教えてくれる。
沙弥のふくらみかけな胸の中心には、ピンク色のハート型シールが貼られていた。
「どひーーーーーっ! うひょわぉあ~~~~!? にゃにゃにゃ、にゃんじゃこれ~~~~! も、もうあたしおよめさんにいけな~~~~い!」
「ふふ。大丈夫大丈夫。私がもらってあげるよ、沙弥」
沙弥に言われた事を、そっくりそのまま返してあげる明穂。これまたぞんざいすぎるプロポーズだった。
「さて。沙弥。この格好でね。お帰りなさい、あなた。お風呂にします? ご飯にします? それとも……とか、言ってみてよ」
「あら、いいわねぇそれ。人妻ね」
「あはっ。可愛いよ。大好きな人に、そんなこと言っちゃうんだね」
明穂、緒美、智夏の順に好き放題言っている。
そして数分後。沙弥は、実際に言わされていたのだった。
雰囲気を持たせるために、おたまを持たされて、玄関先で。
旦那様役は勿論、明穂!
「お、おかえりなさい、あなた。お風呂にします? ご飯にします? それとも、わ・た・し? う、う……うきゅ~~~~~~~~~! ごろじで! もうごろじで! うきゃ~~~~~~~~~っ!」
そんなこんなで話は流れて……。
「記念写真、撮らない?」
緒美がそんな提案をした。
「まじですか!? まじで言ってますかそれ!?」
「勿論大まじよ」
緒美は頷いた。
「あ、いいね。せっかくだから、撮ろうか」
「私もいいよ。何だか、慣れてきちゃった」
明穂と智夏も同意していた。
「みみみ、皆さん感覚が麻痺してないですか!?」
「誰のせいかしら?」
緒美の言葉に、明穂と智夏はうんうんと頷いた。そんなの、今更なことだ。
「あっはい。あたしのせいです。その通りです。お馬鹿でご迷惑でゴメンナサイ……」
急にしょぼんと落ち込みそうになる沙弥に、みんなは言った。
「楽しかったから、いいよ」
と、智夏。
「うん。最初はどひゃ~~~! ってなっちゃったけど。考えてみればさ。お泊まりするたび、みんなと一緒にお風呂入ってるくらいだし」
冷静になった明穂。
「あなたの思いつきはなかなか、退屈しなくていいわ」
にっこりと笑う緒美だった。
何だかんだで沙弥は、みんなに愛されているのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「撮るよ~?」
沙弥が、智夏と緒美の二人に声をかけた。
愛用のコンパクトデジカメで、コスプレ写真を撮るのだ。
最初に撮ったのは、四人が揃った集合写真だった。
そしてお次は、カップル同士の写真。智夏と緒美は仲良くハグしていた。ラブラブだ。
ところがここで、思わぬ問題が発生した。
「は~いチーずっ!?」
「っ!?」
沙弥がかけ声と共にシャッターを切った瞬間、智夏が緒美の顔をぐいと引き寄せて、唇にキスをしたのだった。
「と、智夏っ!?」
緒美が目を見開き、叫んだ。
「お返し、だよ」
エッチな姿をからかってくれた仕返し。ということだ。どうやら忘れていなかったようだ。ハンターのように、緒美の隙を狙って唇を奪ってしまった。
してやられた緒美は思う。
智夏は時々、とんでもないくらい大胆になることがあるのだと。
大人しい地味子のようでいて、想像をはるかに超えたように、積極的な姿勢を見せることがある。それこそ、沙弥の思いつきのように予測不可能だ。
それが、この子の堪らなく可愛い所の一つなのだ。
勿論、そのことを緒美は誰にも言わない。自分だけの秘密だ。
「うひょ~~~! バッチリ撮れちゃってますよ! ピンボケもないです! おみおみさんとともちんのド迫力なちゅ~~~写真~~~っ!」
デジカメの画面で写真を確認して、沙弥は興奮したように言った。
「ふふ。狙い通りだね」
ずり落ちた眼鏡の位置を直す智夏。
「やられたわ、智夏」
ふうと、緒美はため息。
「沙弥ちゃん。後で、データもらえるかな?」
「もちのろんっすよともちゃん! お宝写真ですねーーー!」
「私も、もらおうかしら」
「あいさー! おみおみさんも持っていってくださいーーーい!」
そんなやりとりを、少し離れた所で呆然と見守っている人が一人いた。
ああ、キスだ。
好きな人同士の、キスだ。
いいなぁ、キスしたいなぁと、思っていた。
「明穂ー。今度はあたし達が撮ってもらう番だよー?」
それはまるで、信号待ちでぼーっとしていて、信号が赤から青に変わったことに気付かなかった人のよう。明穂はビクッと震えた。
「はっ!? わわわ、私も沙弥と仲良くキスしてるところを撮って欲しいだなんて思ってないからねっ!?」
それはもう、白状したのと同じことだった。
「思ってるやんかこのぽんこつ明穂~~~っ!」
結局この後、明穂は沙弥に散々キス攻めにされ、それをまたたっぷりと撮られてしまうのだったとさ。
大人の瞬間!
果たして四人はたっぷりと、楽しめたのかな?
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