その4.たっぷりと看護しちゃおう!

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その4.たっぷりと看護しちゃおう!

「な、何なのこれは~~~!? なんでこんな服まであるの~~~!?」  困惑に満ちた、智夏の叫び。 「す、スカート短すぎ! ミニにも程があるよっ!?」  智夏の白くて瑞々しい素肌にピッチリと張り付く、薄いピンク色のナースコスチューム。沙弥が智夏に差し出したのは、そんな代物だった。  何だかんだ言いつつ、智夏も明穂と同じように、律儀に着てしまった。 「智夏」 「何よ~!?」  恥じらいを堪えきれずいっぱいいっぱいな智夏と、対照的ににこにこと笑顔を見せながら、とても楽しそうな緒美。 「その姿。最高に可愛いわよ。思わず注射器とか持たせてみたくなっちゃうくらい」 「……。あ、ありがとう。でも、恥ずかしがってる私を見て、楽しんでるんでしょ?」 「あら、そんなことはないわよ?」  勿論そんなことはあるけどもと思ったけれど、とりあえず緒美は言わないことにした。 (恥ずかしがってる智夏は本当に、可愛いわ。ぺろぺろしたくなっちゃう)  思わずじゅるりと舌なめずりをしたくなるほどに、魅力的だ。 「あ~。ともちゃんは気づいてないかもしれないんだけれど~」  にやけた沙弥が言う。  ちなみに今、明穂の存在感が全くないけれど。バニーガール姿のまま、部屋の片隅で絶賛放心中なのだった。肌の露出が多い格好に、羞恥心がリミットオーバーしたのだろう。まったく、気の毒なことだ。 「何なのよ~!?」 「いや、その、ねぇ。ともちゃんの可愛いおぱんちゅちゃんがもろ見えしちゃってるよ?」 「ふぁあああっ!?」  とんでもないことを指摘され、智夏は思いっきり、スカートの布地を下へと引っ張った。すると……。 「ひゃはああああっ!?」  智夏の、とても発育の良い胸元が圧迫されてしまい、ぷちんっという軽~い感触と共に、ボタンが一つ二つ、吹き飛んでしまった。 「あ~~~~! こ、今度は何なのよ~~~~!」  そんな状況なので、慌てて片手で押さえて隠す智夏。 「おおう。我ながら、実に絶妙なバランスの衣装だこと」  沙弥は狙い通りだと、うんうんと頷いた。実は、こういう状況についても最初から想定していたのだ。  明穂に着せたバニーガールの衣装も、智夏が今着ているミニスカナースの衣装も、沙弥が生地から作ったお手製なのだった。  何を隠そう、沙弥の両親は服飾デザイナーなのだ。それも、両者揃って世間一般に名が知れているような凄腕だ。  故に。ミシンを始めとして裁縫道具と、自由に使える生地などは潤沢にあった。  両親も、沙弥には可能な限り自由に、衣服を作らせてくれたものだ。もしも娘に才能があるならば、是非とも開花させてみて欲しい。けれど、無理強いはしたくない。親の理想は押しつけはしない。そんな自主性を重んじた教育方針なのだった。  沙弥も沙弥で、友達が家にお泊まりするたびに、お風呂の時とかにこっそりと衣服やら下着のサイズを把握していたのだった。まったく、抜け目がないものだ。 「うぅ……。沙弥ちゃん。こんなに服を作るのが得意なら、美術部じゃなくて手芸部とかに入ればいいのに……」 「いや~。部活だと自由に作れなさそうだからさ~。ガチガチにされると嫌になっちゃうんだよね」 「自由に作ると、バニーガールとかナースの衣装になるのね……。意味がわからないよ……」  実は、沙弥は智夏にはわざと言わなかったけれど、胸元のボタンについてはあえてぷつんと切れやすいように、糸のチョイスと合わせて、緩く縫い付けていたのだった。 「それ作る時、ちょっぴり失敗しちゃってさ。布の寸法がすこ~しばかり足りなかったんだなこれが」 「ちょっぴり失敗、じゃないでしょそれ! 大失敗だよ大失敗! これじゃ私まるで、露出趣味な変態さんじゃない!」  お尻と胸の露出を隠すため、ダンゴムシのように丸まっている智夏は、沙弥に抗議する。 「いや~はっはっは。んでもでも、こういうのって、お尻隠して頭隠さずって言うんだっけ?」 「本来は逆よ。頭隠して尻隠さず、ね。……もっとも、智夏はお尻すらまともに隠せてないみたいだけど」 「も、もう嫌~~~! 沙弥ちゃんのエッチ! 緒美ちゃんの変態! 明穂ちゃんの……。ごめん。私、明穂ちゃんの気持ち、今ものすごくわかる。ごめんね。恥ずかしかったよね」 「ああ、智夏! いけないわ!」  突然緒美が、真剣な表情になって智夏に迫った。 「な、何よ!?」 「ナースキャップがずれてしまっているわ! 身だしなみは大切なことよ!」 「そんなこと気にしてる場合じゃないでしょ!? 緒美、絶対からかってるでしょ!?」 「あらあら。そんなことはないわよ? ふふふ。とっても大人よ智夏。大人の魅力がたっぷりだわ。うふふ。ふふふふ。ナースな智夏、最高に可愛いわ。萌えちゃうわ」  この気紛れ猫と、智夏は頭にきていた。 「緒美ちゃん、絶対からかってるよね!」  まだだ。きっと、次もあるはずだ。  この流れだと次は、緒美が何かを着させられる番のはずだ。  智夏は緒美に仕返しをすることを、密かに誓ったのだった。
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