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その5.バブリーに踊りまくれ!
「沙弥。これは一体、どういうことかしら?」
笑顔だけど、こめかみ辺りをだいぶビキビキさせている緒美。だいぶご立腹なようだ。
「いやいや。なかなかお似合いですよ、おみおみサン。おほほほほ」
緒美の威圧もどこ吹く風。完全にすっとぼけた様子の沙弥。
緒美がご立腹な理由は、着せられた服にあった。
「これって確か。ぼでぃこん、ってやつだよね?」
相変わらずナースコスチュームのままの智夏が、緒美が着ている服を、どこかで見たことがあると言った。
「その通りです! ともちゃん、よくご存じで! これは、かつて日本がバブルと呼ばれる好景気だった頃に流行った服装! その名もボディコンスタイルなのです!」
体にぴっちりと張り付いたニット素材。それは、緒美のすらりとした、見事なボディラインにぴったりとマッチしていた!
大胆なミニスカに、胸の谷間もあらわ!
脚線美がとっても眩しい!
そしてド派手な蛍光ピンク!
まさに、数十年前のバブル景気絶頂期を彷彿とさせるインパクト!
そんなものをなぜか、今時の子である沙弥が緒美に着せたのであった。
「確かに、大人っぽいね。ボディコンは」
ようやくのことで復活した、バニー姿の明穂がそう言った。
緒美と智夏の格好を見て、自分と同類なことに気づいて、ようやくのことで正気を取り戻したようだ。
「あいや! 各々方、お待ちあれ! それだけじゃありませんですぞ! さあさあ、おみおみさんはこれを持って!」
「これは何かしら?」
「羽付扇子ですよ! ジェリ扇子ですよ! これを持ってド派手に振り回して、お立ち台の上で思う存分踊りまくるのです! さあさあ! 気分はジェリアナトーキョーなのです!」
「……仕方ないわね」
呆れたのか、興味を抱いたのか、緒美は微笑んだ。
沙弥はいつの間にかオーディオプレイヤーを用意して、BPMがやたら高そうなそれっぽいダンスミュージックを大音量でかけた。更に、ご丁寧にもお立ち台まで持ってきた。
「こうかしら?」
「そうそう! いいよいいよー! そんな感じ! おみっちサイコー! ダンスダンスダーンスッ! ひゃっはーーー!」
「いい運動にはなりそうね」
そして緒美はその上に立ち、扇子をぶんぶん振り回してダンスを開始したのだ!
「ねえ智夏。素朴な疑問なんだけどさ。じぇりあなとうきょうって、何?」
「確か、1990年代の初頭にあった、有名なディスコのことだよ」
「あ~。そういうやつか。なんとなく、写真で見たような覚えはあるけど」
「沙弥の言う通り。みんな、あんな大胆な格好で、踊りまくっていたんだって」
「そうなんだ。すごいなあ」
ふと、みんな我にかえる。
私たち、何でこんなことやっているんだったっけと、思ったのだ。
「それはそうと沙弥」
「なんでしょ?」
「何でいつの間にか、コスプレショーになったのかしら?」
ダンスで一汗かいてから、緒美は沙弥に問うのだった。
「さあ?」
確か、大人を感じる瞬間はどんな時かという話になって……。
「沙弥。新作コスチュームができたから、私達に着せてみたかっただけなんでしょ?」
明穂が問う。智夏はお馴染みの、半開きなジト目で沙弥を見つめる。
「はっはっはっはっ。それはどうかな~?」
絶対そうだと、沙弥を除いた三人は思うのだった。
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