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乾杯して自己紹介し合って……気づいたらシバちゃんが声を押し殺して笑ってる。
どしたの?って聞いたら、
「あんた……あんだけ張り切ってたのになんでそんな引っこんでんの」
うっ……ヤなとこ突いてくるね。仕方ないだろ。人見知りなんだよっ
「今は様子見だよ、様子見!」
じろっとシバちゃんを睨んで前を向いたら、ちょうど正面に座った、ふわっとしたボブスタイルの可愛い系女子と目が合っちゃった。にこって微笑まれて、脇汗かきながら俺も微笑み返す。
「みつ…ばさん、でしたよね?私吉永って言いまぁす」
その子のその言葉をきっかけに喋り始めて、どのくらい経ったかな。緊張してたからすごい長く感じたけど。
不意に「吉永さんはさぁ~」ってシバちゃんがいきなり会話に入ってきたの。
そしたら彼女、始めはキョトンとしてたんだけど、どんどんシバちゃんと盛り上がっちゃって。俺としゃべってた時は大人しかったのに、今は声を立てて笑ったりして。
いつの間にか二人で会話してんの。
これ面白くない状況だよね?でも、もう1回割り込みなおすってのもね。ヤな感じだし。
そう思ってたら、斜め前の別の女の子が話しかけてきてくれて、俺は頑張るぞって喋り出して……少し身を乗り出して喋ってたら太ももをツンツンされる感触があって。
ん?と太ももを見たら、シバちゃんが指で小さいバッテンをしてんの。テーブルの下で。
なに?どういうこと?
よく分かんなくて、またその子とおしゃべりしてたの。甘い声で良くしゃべる子で、カールさせたロングヘアがすんごく可愛くて。
そしたらスマホがバイブしだしたの。
『なんか問題発生したら電話するから』ってシバちゃんが言ってたからそれかと思って「ちょっとごめんね」ってその子に断わって見てみたら、ディスプレイにはやっぱりシバちゃんの名前。
思わず横を見ちゃったよね。そしたら膝の上にスマホ持って前の子と喋ってんの。
さっきのバツといい、電話といい。なんなの?意味が分かんなくて俺はトイレに立った。なんか言いたいことがあるのかと思ってさ。
案の定、少し時間を空けてトイレにやってきたシバちゃんが「あの子はだめ」って俺の顔を指差した。
「学習しなさいってあれほど言ったのに!計算があんだけ顔に出てんのになんで分かんないかな」
シバちゃんは一気にいってため息をついた。
「あんた合コン好きみたいだけど、絶望的なくらい向いてない」
何なの!?その、カワイソーな子を見る目!!
心外!!心外だよ!!
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