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「合コンに向き不向きなんかないだろっ」
「あるの!あんた今までああいう風に自分から話しかけてきてくれる可愛い女の子ばっか選んでたんでしょ」
そっ そりゃあ……そうだけどさ。
だってだって、俺がエンジン温まって、ようし声かけるぞ!ってなる前に向こうから話しかけて来るんだもん!
「あんたはね、ルックスいい割に自信無さげにしてるからよけいカモにされんの。ああいう女に!もう、合コン禁止!」
「な……な……」
「総司さんの顔潰すわけにはいかないから最後まではいるけど、2次会、ライン交換なしね!」
びしぃっと言い捨てて、シバちゃんは出ていった。ポツンとトイレに取り残される俺。
「なんであそこまで言われなきゃなんないんだよ!」
やっと脳味噌に到達して声が出る。時間がかかんだよね、基本。
絶対シバちゃんを見返してやるって思ってさ、後半頑張ったよ。話しかけてくる女の子がダメって言うならこっちから話しかけるんならいいだろって。
結果……確かに今までとはちょっと違ったタイプの子と意外に話が合ってラインを交換した。シバちゃんもいたし、2次会は遠慮したけど。
帰りの電車の中でシバちゃんは無言だった。席は空いてるのに、隣じゃなく向かい合わせに離れて座って。はじめは対抗して無言だった俺だけど、だんだん寂しくなってきちゃって。
「ねー 怒ってんの」
俺はそっぽを向いたままぼそっと呟いた。ローカル線に入ってから空いてきた車内では、その言葉が向かう先はシバちゃんしかなくて。
「別に。いいんじゃない。あんたの人生だもんね」
なんとなく突き離された感じがして、ゆっくりシバちゃんに目を向けた。
その表情は怒ってなかったけど少しだけ寂しそうで、俺が見てるのに気付くと気まずげに、夜の車窓へ目を向けた。
結局シバちゃんが自分の駅で降りてくまで俺たちは喋んなくて。
別れ際……
「悪かったよ。口はさんで。じゃね」
って、シバちゃんは俺の方を見ずに降りて行った。
なんかすっごい寂しくて。
結局一番楽しかったのって、合コン始まる前じゃん?って。
急に今日頑張ってゲットしたラインも色褪せて感じた。
スマホの画面をスクロールしながら、今日俺が話しかけた子を探して迷うことなく消去した俺は、月曜日にどうやってシバちゃんと仲直りしようかって……そんなことばっかり考えてた。
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