181人が本棚に入れています
本棚に追加
一応東京ですっていうこの街は、程よい都会で俺は気に入ってる。
緑も多いし。実家から通うにはちょっと遠いんだけど、引っ越し用に貯めてきたお金がもう少しで目標額になるから、念願の一人暮らしももうすぐ!
そしたら彼女も呼べるし。むふふ……
俺は職場のすぐ近くの喫茶店に入ってお気に入りの窓際の席に腰を下ろすと、コーヒーを頼んでウキウキしながら漫画をめくった。
好きな漫画週刊誌数誌の最新号を読むために、週1で必ずここに来てんの。
コーヒーが運ばれてきて、しばらくした頃。窓がコンッとノックされて、目をやったら総ちゃんが手を上げてた。銀行に行ってくるって出てった帰りだね、多分。
すぐにドアベルの音がして、「いらっしゃいませ」という店員さんの声に爽やかな笑顔で挨拶して総ちゃんがこっちに来た。
「おっす幸汰。いつもの読んでんな。今日はシバは一緒じゃねぇの?」
俺の向かいの席に座りながら、近くに来た店員にブレンド一つ、って本人無自覚のキラースマイルで言って……店員さんは困ったみたいに照れ笑い。
とにかくモテんだよねえ、総ちゃんは。昔っから怒涛のごとく。
俺だってまあそこそこモテたけどさ、総ちゃん見てたらもう自分なんてって思うよ。
ルックスは最高の爽やか系。明るくて面倒見が良くて、頭はいいし。運動そこそこ出来るし。そりゃモテるよね。女の子大好きな俺としては、師匠と崇める存在ですよ。
「シバちゃんはまたマンガの見すぎで寝不足なんだって。今寝てる」
「あいつもう、あそこでの昼寝を計算に入れて睡眠取ってるよな」
総ちゃんは可笑しそうに言って、でもその後で少しだけ何かを言いよどんだ顔をしてから、あのさ、と声を落として顔を近づけてきた。
「お前、彼女と別れたの?」
「えっ なんで?別れてないよ!?」
なんだ、なんだ!何の話!?
総ちゃんは「お前見る目ねぇなあ」と、後ろ頭をきまり悪そうに掻いて、
「あの子、俺にご飯行きませんかぁって電話でモーションかけてきたぞ」
って……信じられないことを言って来た。
リサが電話?なんで総ちゃんの番号知って……え?
「多分お前のケータイ見たんだろ。もちろん断ったけど、別れた方がいいんじゃねえ?」
もー……呆然。シバちゃんのほら見ろ言った通りだろ、とでも言いそうな顔が頭に浮かんで、消えた。
最初のコメントを投稿しよう!