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シバちゃんがため息ついてる。ざわつく居酒屋さんの奥の席。ぐしぐし泣く俺を前に。
「ほんと……が・く・しゅ・うしろ!同じような女に騙されて……」
「だって……だって……可愛かったんだぼん……」
「可愛くて、かつまともな女は他にいっぱいいるでしょうよ。もー…… ほら、顔拭いて」
そう言って柔らかそうなタオルハンカチを渡してくれたけど汚すのは悪い気がして、それを遠慮してテーブルにあったおしぼりで顔を拭いた。
前の彼女に振られた時もこうしてシバちゃんに聞いてもらったっけなぁ……
シバちゃんはね。昼間、可愛くないなんて言っちゃったけど……ほんとはすごく優しい。俺のことをすごく心配してくれて、だからこその昼のあの言い方だって……もちろん俺だって分かってる。
落ち込んでばっかりいられないよっ
俺はビールのジョッキをがしっと持った。
「今日は飲む!!」
「明日まだ仕事あるかんね。ほどほどにね」
「えー……テンション下がるそれー……」
冷静なやつってこれだからさぁー……
「そうだ!飲め飲め!飲んで忘れてしまえ!」とか言ってくれたらいい調子になれるのにぃ……
「二日酔いで仕事する気?恋愛ボロボロで仕事までボロボロだったらあんたもう救いようがないよ」
……真顔で言うことないだろっ!
くぅ~……やっぱ…可愛くな~い!……けど、ごもっともです。俺は高々と上げてたジョッキを少し下げて、ちびりちびりと口を付けた。
次の日。
立ち直りが早いのが俺の長所。泣いた割には元気に出勤した俺を見て、シバちゃんが「元気になってよかった」とでも言ってくれるかと思ったのに、
「そんなだから同じことを繰り返すんだろうね……」
ってさぁ……なに呆れてんの!失恋の痛手から立ち直った友達に言う言葉なの、それ!俺がそう言ってやったら、
「立ち直るもなにも、痛手になってないから学習しないんだろ」
そうダメ押しして。もう……ほんと、容赦ない。
まぁ……ここに勤め始めて3年。その間にこれ3度目だからね。そりゃそう言われても俺も文句言えないかもしんない。
いいの。次こそって思ってるから。
しばらくは自粛するけど、きっと次こそ俺の運命の相手に出会えるはず!
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