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激烈イケメン
うちの整骨院は筋肉や関節に痛みが出てる人の実費治療がメイン。午前中は主婦とかおじいちゃん、おばあちゃん達、午後は会社帰りのサラリーマンやOLさんが中心になってくる。
そんなある日の夕方……激烈イケメンがウチにきた。ただのイケメンじゃないの。激烈イケメン。
「槙野玲王さん……」
問診表を見て診察券を作りながら、すんげぇドキドキしてる。彫りが深くて鼻筋が通ってて眉毛がキリッとしてて……ハーフかな?名字は日本人だけど、下の名前ガイジンっぽいもんね!
ちょっと怖いけど、いやぁ、こんなキレイな男の人ってそうそう見ないよね。下まつ毛までびっしり……
「あの……次はどうすればいいんですか」
不審げに問われて、俺は慌てて「手首の痛みですよね。どの辺がどんな時に痛みますか?」と槙野さんに尋ねた。ダメダメ!ちゃんとお仕事しなくっちゃ!
「美容師なんですけど。ハサミが持てなくて困ってます」
美容師さんか~!なるほど、そんな感じする!格好もなんかお洒落だし!
「分りました。まず電気当てますんで、こちらへどうぞ」
俺はベッドへ案内して横になってもらい、右手首の痛みを引き起こす腕や肩、背中の関連ポイントに吸盤をくっつけて電気を流し、待ってもらってるその間に院長に相談に行った。
「腱鞘炎っぽいんですけど、俺でいいですか?院長いきますか?」
俺は他の患者さんの治療に入ってる総ちゃんにひそひそ話しかけた。
「次、俺指名の人入ってるからな……三葉先生お願いします」
「りょーかいです!」
ピピピピピピ
ちょうど電子音が鳴り響いて、電気が終わったことを俺に知らせる。
ここからは、相手がイケメンだろうが何だろうが全く関係ない真剣勝負!
ベッドにうつ伏せてもらって肩周りや腕、腰の緊張を力強く念入りに手でほぐしていく。
「あの……痛いの手首なんですけど」
不安げに言う槙野さん。そうだよね。そう思うよね。
「肩周りの動きが悪くなると、その影響が手首に出るし、肩周りの動きは背中や腰と連動してるんです。だから手首を治すにはまず関連してる筋をほぐしていかないとね」
「へぇ……そういうもんですか」
「不思議でしょ。ほら、前腕から……上腕……肩周り……脇。背中も……腰まですっごい凝ってる」
「確かに……いた……痛いっす……ね」
一通り終わって手を動かしてみた槙野さんは、
「あ、すごい。まだ痛いことは痛いけど、かなりマシ……」
そう呟いて、不思議そうな驚いた顔をした。
ふふふ……やったぁ!これがあるからこの仕事はやめらんないの!
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