You too

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「鈴木さんこそ、急に私来ちゃって大丈夫だったんですか?」  何だか悔しくて絶対に言いたくなかったことを口に出してしまう。 「ん?」  鏡越しに目があってしまって少し焦る。 「彼女さん、とか迎えに来たり」 「いないよ?」 「え?」 「ん?」  じゃあ、あれは誰だったんですか? 「里穂ちゃん?」  考え込む私を見て、首を傾げてる鈴木さんに。 「いえ、何でもない、です」  誤魔化し笑いで目をそらす。  だったら誰だったんですか?  あの日お店の前であなたを待っていた可愛い人。  お店から出てくるあなたを待って腕を絡ませる。  それにあなたは微笑んで歩き出した。  すれ違う私に気づいてなかったでしょう?  楽しそうに笑い合ってたから。 「二ヶ月くらい前にさ」  突然話し出す鈴木さんの声に耳を傾ける。 「里穂ちゃんとすれ違ったよね? 夜に」  気づいてた?! 「もしかしてだけど、誤解されてる?」  ん? どういうこと?  というか、あの日の、こと? 「何を、でしょう?」  気付かれぬように微笑んでみせたら。 「あの時の、妹ね。成人のお祝いに飯奢る約束してたんだ」  笑いながら鈴木さんが話してくれたのは。  あの日私が見たあの子は鈴木さんの妹だということ。  8個下の妹さんは海外に留学中で成人式のために日本に帰ってきてて。  私とすれ違ったあの日は妹さんのお祝いを約束していた、と。  年の離れた妹を可愛がりすぎてあんな風に腕を組んでくることもあったりするそうで。  ただ、それを私に見られたのが恥ずかしくて声をかけられなかった、と。  次に会った時に私に話そうとしてたけどそれきり会えなくて、と。
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