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中学の頃だっただろうか、彼女彼氏がクラスで増えた時期があった。学校内で浮かれまくる男女グループの中に俺は所属するタイプではなかった、が断っても止まない告白続きを横で見ていた……そう幼馴染みのモテる所を
『人気者ですね~りょた、いっそのこと誰かと付き合えばいいじゃんか』
『りょた』という呼び方はたまに出る省略した呼びであり、結構俺の中では気に入ってるが涼太郎自身は全く気付いてない様子だ
しかしモテる幼馴染みに対しヤキモチというより正直、呆れていた。真面目な性格もあり誰とも付き合おうとしないのが、また人気の火種となった
そしてモテる隣で明らかにフリーな俺に惨めな視線が来ていたのは、笑えない話だった。けれどそんなことはあの頃の俺にはなんのその、涼太郎の行動を同人誌のネタにしていたのだから
『……別に彼女が欲しいってわけじゃないから、知らない女子と付き合うようなこと流石に変だろ』
『そうかな?それを機にもっと知りたい!とか、知らないからこそどんどん知りたくなるみたいな……お前のこと知りたい女子が沢山ってことじゃないの?』
『そういう取り方もあるのか。祥春は前向きな考え方をするな、俺も真似ようか』
笑う涼太郎の言っていることに大きく首を振り、そんなことをされたらこいつのいい所がなくなってしまうと焦りフォローを入れる。前向きな考えではなくとも、慎重に物事を考えれている涼太郎のいい所なのは確かだが……俺みたいなチャラけた涼太郎が見たくないのもあった
そう言えばこの頃は俺のことを名前で呼んでいたのに、いつから苗字で呼ぶようになったのだろう。全く覚えないがそんなことはどうでもいい話か
「……これなんて中身入ったまんまじゃないか、開けてもないだろお前」
「いーんだよ今いるもんじゃないし、中身あんま漁るなって」
けれどあの時の発言に後悔した。もう少しチャラけてもいいと、涼太郎の真面目な性格が後になって俺に槍となって刺してくるのだから……
後悔、先に立たず。まさにその言葉通りだった
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