腐れ根性こんにちは

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 こほんと小さく咳をしながらパソコン画面を作業する時とは違う机の上に置き、手元の資料を広げる 「……では、これからプレゼンさせて頂きます。福澤祥春です、議題は『幼馴染みは恋愛対象になったとして、関係性はどう変わるか』ということですが」 「……ん?」 「昨日徹夜をして資料を作ったので、目を通しながら聞いて頂ければ幸いです」  渡した資料と俺を行き交いする目線に対し「質問等ございましたら、手を挙げて申し上げてくださいね」と丁寧に言葉を云えば首を傾げられる  友夏先生に言ってもらった後、ただ話し合うのでは何が面白くない。もっと問題視をするようなと考えパソコンのソフトを起動させ……分かりやすく、かつ親しみやすさをと大学生なりに資料作成を始めた 「……は、福澤……なんなんだこれは」 「こちらは俺達のことを第三者目線と……」 「まずその口調をやめろ。それと何なんだこの……スライドも」  カチカチとクリック音を鳴らしながら、資料と共にグラフなりフリー素材を使い作ったスライドショーを勝手に流されてハッとなる 「何すんだよ!先に見ちゃったら面白くないだろ!!」 「面白いも何も……お前はどういう立場か分かってこんなもの作ったのか?バカバカしい」 「ば、バカバカしいとはなんだ失敬だな!真剣な雰囲気とか苦手だから少しでも砕けた感じで……その、涼太郎の気持ちに触れようと……!」  まさか馬鹿にされるとは思ってなく本音が漏れ、ハッと口を押さえながらも印刷した資料を机へと置き床へと座り込む  パソコンを閉じる音が聞こえ目をやれば、俺の作った資料をまとめて端に置く涼太郎の姿があり。じっと見つめていれば頭を軽く小突かれる 「言って変に意識させたなら悪かった、でもこんなすぐに行動にしなくてもいいんだ。お前のペースで……」 「オタクは行動力の化身なんだよ!」  別に直ぐに涼太郎のことをどうかしたいとか、今の状況をどうにかしようとした訳でもなく……ただただ思い立ちいつの間にか行動をしていた。今更ながらアホにも程があると、自分でも気付くが目の前の涼太郎は呆れる表情をせず小突いた所を撫でられた 「……そうだな、昔から考えるより先に行動する奴だよ祥春は」 「もっと褒めな、俺は褒められたら伸びる子だから」  撫でられた頭を差し出すようにすれば、声を出し笑われぐしゃぐしゃと髪を掻き回され「おい!」と怒ればその荒れた前髪の隙間から見える涼太郎の表情にピタリと身体が止まった  漫画でよく聞く『こいつこんな顔出来るんだ』とまさに今思い、照れくさく前髪が戻せず目を背けた
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