見えた境界線

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「……涼太郎?」  俺の視界はただの白い壁、と抱き締められて見える涼太郎の肩  今の今まで全部、頭が追いついてない状態で背中に回った手へと感じる力強さに目をぱちくりとさせながらもゆっくりと俺も手を回す  同じ世界線で育っても身体の体格がこうも違ってくるんだなって、自分よりしっかりとした背中に触れて……まぁ親も違うんだからそんなの普通か 「……俺は、今まで通りって訳には出来ないって言いたかったんだ」  何も考えずに背中を触っていた途端にそっと身体を離されるも、落ち着いたトーンが耳へとスっと入ってきて意識が止まる 「な、なんで……そんなこと言うの?俺なんか涼太郎に悪いことした?」  思わず離れた身体を、まだすぐ近くに居るのに引き止めるように服の袖を握り身体を起こして見つめる  少し目線を逸らされるも俺の掴んだ手を見て、こちらを見る目はいつもと何だか違うような視線に体が強ばる 「そんなわけないだろ……けど、お前が思ってるほど俺は……意識してるんだと思う」 「……何を?ちゃんとハッキリ言えよ!」  涼太郎の曖昧な態度にイラつき声を荒らげてしまう  立場的にいつもだったら、俺が怒られる側なのに珍しくも涼太郎にしてしまった己の態度に何をイラついてるんだと自分で自分に言い聞かせる。  しかし目の合わない目の前の男を見ていて俺は限界になり、勢いよく身体へと乗りかかり馬乗りになって無理やり視線を合わせ睨む 「……正直、何を言いどもってんのか知らねぇけどさ。幼馴染みの奴から抱きたいのだの、キスしたいって言われた上に更だけど既に今はもう事後だ!だから今からなにか言おうとしてんなら、めちゃくちゃ面白いことかアホみたいに笑えることじゃねぇとマジで許さねぇぞ!」  言いたいことを全部ぶちまけてた、オブラートに包んでやろうにも俺の辞書にオブラートなんてないし。何年もの付き合いのある幼馴染みに、今更遠慮なんてする気も起きやしなかった 「……祥春」 「言う気になったか?このスットコドッコイ野郎め……」  固まっていた涼太郎の顔は目をぱちくりとすると、ふっと柔らかく口角を緩めて笑ってさっきの硬い表情からいつもの顔に戻る 「すっとこどっこいって……どういう言い方だ。でもこうバッサリと言われて、少し吹っ切れた……」  何に笑ってんだよと小さく呟き目線を逸らした瞬間、両の頬を包まれさっきとは逆に目を合わせられて軽く唇へとキスをされる 「……好きだよ、お前のことやっぱり。友達とか幼馴染みとか無しで…祥春が好き」
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