年下の彼は甘え上手で困ります

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「楽くん!!」 私は、ロビーで車椅子に乗る楽くんを見つけて駆け寄った。 楽くんは、私に気付いて、嬉しそうに手を振る。 あれ? 包帯は? 「楽くん、処置はこれから?」 「ううん、終わったよ。  今、会計待ち」 にこやかな楽くんには、どう見ても、悲壮感はない。 で、気付いた。 楽くんが、左足だけ、緑のスリッパを履いていることに。 「まさか……  骨折って、足?」 「そうだよ」 のんきに微笑んでる楽くんに腹が立った。 「バカ!!!!」 私は叫んだ。ここが病院のロビーであることも忘れて。 「手だと思ったじゃない……」 私は膝から崩れ落ち、床にへたり込んだ。 ほっとして涙が止まらない。 「ごめん。  まさか、そんなに心配してくれるとは  思わなくて……」 楽くんが、座り込んだ私の頭をそっと撫でてくれる。 「コンクール、頑張るね。  純鈴さんの期待に応えられるように」 うん…… うん…… 私は、黙って頷くことしかできなかった。 そうして、その10日後、楽くんは、何とかっていう偉い人の名前がついた特別賞をもらって帰ってきた。 私は一言お祝いを言いたくて、仕事を休んで駅まで迎えに行く。 「頑張ったね! 良かったね」 そう言う私に、松葉杖を突いた楽くんは、にっこりと微笑んで言った。 「純鈴さん、遊園地に行けないから、代わりの  ご褒美貰ってもいい?」 「何?」 「純鈴さんとキス……したい」 ………………は!? 私は慌てて首を振る。 「そういうことは、付き合ってる人同士がするん  です!」 「じゃあ、付き合えばいいんだよね?  純鈴さん、好きです。  俺と付き合ってもらえませんか?」 それは…… ……………… ……………… 私はこくんとひとつ頷いた。 「やった! ありがとう、純鈴さん。  じゃあ、キスは帰るまでのお楽しみにします」 え!? キス、決定事項なの!? 私は、結局そのまま、上手に甘える楽くんに負けて、楽くんが一人暮らしをする音大生専用マンションへとお持ち帰りされた。 でも…… 幸せだから、ま、いっか。 楽くん、大好き。 これは、いつ、言おうかなぁ…… ─── Fin. ─── 感想・ページコメント 楽しみにしています。 ぜひ一言お寄せください。
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