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苦しい。
息ができない。首に、何かがくい込んでいる。縄――縄だ。
限界はすぐにきた。意識が遠のく。
振り返り、見上げる。そこに差す人影。
なぜだっけ。
僕はなぜ――死……
■■■
ぼんやりと、僕は自分の席に座っていた。
高校の終礼間際。窓際の席。教室内に生徒はいるけど、先生はいない。でも、誰も口をきかずにぼうっとしている。
外を見る。暗くも明るくもない。
一日の終わりのチャイムが鳴った。
僕は教室を出た。帰る。――どこへ?
(そうだよ。どこへ?)
ようやく意識が覚醒してきた。
昨日もそうだった。一昨日もそうだった気がする。
ここは学校だ。でも、今日何の授業があったかを覚えていない。
僕は桜里陽太、高校一年生。
この高校には転校で入ってきた気がする。だが、なぜ転校してきたのかを覚えていない。
同じ違和感を昨日も味わった。恐らくは、その前も。
僕は駆け出した。校門を出る。
とにかく家に帰るんだ。そうだ、家族の元に。
しかし家族の顔を思い浮かべようとすると、急に激しい不快感が喉の奥からせり上がってきた。
そして、僕の意識は途切れた。
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