ゴーストタクシードライバー

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 三人はタクシードライバーに恐怖心を抱くまでになっていて言われなくても降りたかったので慌てて正雄と翔太がそれぞれ左右のドアから降りた後、孝志も降りようとしたが、左右のドアが閉まってしまい、孝志だけ後部座席に閉じ込められてしまった。  そうしてタクシーは走り出し、孝志はすっかり怖気づき、全身がぶるぶる震え上がった。 「あなたですね。私を轢き殺したのは」  この一言を聞いた瞬間、孝志は轢き逃げした時のことが鮮明に脳裏に蘇って顔が真っ青になり、歯までガタガタと震え出した。  その気色にタクシードライバーは確信しながら言った。 「私は轢き殺されてからというもの自分の怨念によって生じたこのゴーストタクシーを駆るゴーストタクシードライバーとなって毎夜、この辺りを走っては人を乗せ、乗客に轢き逃げ事件のことを聞き出し、反応を窺って来たのですが、遂に探し当てました」 「ち、ち、違うんだ。じ、実は僕は彼女の車の助手席に乗っていて彼女が轢き殺したんだ!」と孝志は必死に叫んだが、ゴーストタクシードライバーに振り向かれると、ば、バケモノだと呟いた切り失神してしまった。  何しろゴーストタクシードライバーの顔は肝脳地(かんのうち)(まみ)るで轢き殺された時の目も当てられない、血まみれのぐしゃぐしゃになった、見るも無残な状態そのままだったのだから失神するのも無理はなかった。
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