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「私の勝手でしょ」
体ごと薫兄に背を向け窓の方を向いた。
息が窓ガラスに当たって白く曇る。
「カルテいつ届いたの?」
「一昨日の夜に着いたよ」
小沢君が言っていた日より早く着いていたのか。
「でも気づいたのはカルテを見てからじゃなくて、エイミーが白川で『薫兄なんて大っ嫌い』て叫んだ時だったよ。あんな風に僕に言うのはエイミーしかいない」
そうだったのか。
でも気づくの遅すぎるよ、薫兄。
それにしてもこうやってバレてみるとなんてことはないじゃないか。
今まで私はいったい何をそんなに恐れていたのだ。
薫兄に何ができるというのだ。
それに銀太郎の言うとおり、今の薫兄にはどすこいがいる。
以前の薫兄とは違って当然だ。
「どうしてそんなことしたんだ」
薫兄の言葉に私は大げさにため息をついて見せた。
「変態の薫兄には分からないよ」
「それでエイミーは幸せになったのか」
当たり前でしょ、と言おうとして言葉に詰まった。
今、私は幸せか?
一昨日の夜、小沢君とサヨナラした時のことを考えると胸がえぐられる。
「幸せに決まってんじゃん」
辛いのは今だけだ。
結婚までいきそうになった相手と破局したばかりなのだから当然だ。
すぐに元気になる。
元気になったらまた新しい恋ができる。
今度は小沢君よりもっといい男を射止めてやる。
本当に?そんな男いる?
「その幸せは本物じゃない。作り物のうわべだけだよ」
「そんなことないよ」
「そんなことあるさ、エイミーのその外見が作り物だと知れば、みんなエイミーの前からいなくなるよ」
カッと頭に血が上った。
「嘘だよそんなの。今どき整形なんてみんなやってるよ」
「みんながやってるからと言って、みんながそれを認めてるとは限らないさ。口先では気にしないとか言って、キレイだねとかちやほやしてても、心の中では所詮整形だろって相手を蔑んでるさ。整形美人と天然美人とだったらみんな間違いなく天然美人に食いつくだろ。自然美こそ神からの贈り物だとかなんとか言ってね、美化するんだ。男なんてそんなもんさ。遊び相手は整形美人でよくても本命には天然美人を選ぶよ。小沢君もそうだったんだろ」
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