二人の兄

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二人が高校生にもなると、その差は歴然としてきた。 それまで私を含め三人とも地元の小中学校に通っていたが、できのいい薫兄は有名な進学校に進み、二年遅れで銀太郎は地元の商業高校に進んだ。 私はといえば、銀太郎に遅れること一年後、中の下くらいの公立校の女子校に進むことになる。 毎年バレンタインの日、薫兄はプレゼントのチョコが入った紙袋を両手に下げて帰ってきた。 一方銀太郎がチョコをもらって帰ってきたところは一度も見たことがない。 薫兄はもらったチョコの、手作り以外の物を全て私にくれた。 そして手作りのチョコはみなゴミ箱に捨てた。 「僕はエイミーがくれたチョコ以外食べたくないんだ」 相変わらず薫兄は私を溺愛していた。 高校に入っても私より醜い女はいなかったようだった。 薫兄はバレンタインの時だけではなく、普段からいろんなプレゼントをもらって来ていた。 手作りのお菓子をはじめ、マフラーやセーターもあった。 その数は毎日違うものを着られるくらいだ。 チョコと同じく手作りのお菓子は何が入っているか分からないからと言う理由で全て捨てられた。 確かに当時、女の子たちの間で自分の髪の毛や唾液を好きな男の子に食べさせると恋が成就すると言うおまじないが流行っていたので、薫兄の取った行動は正解である。 マフラーやセーターを薫兄が身につけることは一度もなかった。 それらは父と銀太郎の物になった。 父は私と同じく太っていて薫兄のために編まれたセーターは細すぎて入らないから主にマフラーを、セーターを銀太郎がもらっていた。 父はともかく、銀太郎にはプライドというものがないか。 私が銀太郎に苛つく最大の理由はそこにあった。
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