それ、お母さんのお腹

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学校は全くと言っていいほど楽しくなかった。 友だちは殆どできなかった。 私はクラスメイトの他の子より何倍も体が大きかった。 それは四月生まれのせいだけではない。 私は肥満児だった。 小学一年生ですでに私の体重は四十キロを超えていた。 平均が二十数キロなので私は二人分ということになる。 友だちができなかったのは、太っているからだけではない。 私はお世辞にも可愛いとは言えない女の子だった。 大抵の大人は小さな子どもを見ると目を細め微笑みかける。 私の場合は違った。 皆一様に慌てて私から目をそらすのだ。 まるで見てはいけないものを見てしまったかのように。 それほど私の容姿はひどかった。 ひどかった、と過去形で語っているが、それは今でも続いている。 私はいわゆる世間でいう、ブスだ。 それも超がつく。 目は小さく離れていて、上を向いた低い鼻は正面からはっきりと二つの穴が見える。 歪んだたらこ唇。 それらがそら豆の形をした輪郭の中にバランス悪く配置されている。 まるで大失敗した福笑いだ。 私の人生がこんなにも狂ってしまったのは、すべて私のこの容姿にある。 三つ子の魂、百まで と、いう言葉がある。 幼い子どもなら無条件に、女の子は「可愛いですね」、男の子は「元気そうな子ですね」と、褒められて育つ。 物心おぼつかない幼年期でも、人はそうやって褒められることでまっすぐな人格形成がなされるのだ。 女の子の可愛いと、男の子の元気。 三歳にも満たない子どもが、それ以外に他者と比べて何を褒められると言うのだ。 よほどの天才児でもない限り無理だ。 褒められることなく育った私の性格は三歳にしてすでに歪んでいた。 私はあまり笑わない子どもになっていた。 それは今でも同じだ。 普段から楽しいことや嬉しいことなどあまりないが、嬉しくても私は笑うことができない。 への字口の不機嫌そうな表情で顔の筋肉が固まってしまったかのように、私は年がら年中不機嫌な顔をしている。
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