それ、お母さんのお腹

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いつも不機嫌な顔をしていると、本当にいつも何かに不満があるようになってしまった。 この私の歪みぶりから考えて、私の本当の母親でさえも私を可愛いと褒めなかったのだろう。 私を捨てた母親だ。 十分にあり得る。 父は母親のことは一切私に教えてはくれなかった。 死別なのか離婚なのか蒸発なのか。 ただ死別でないことと、父と母が円満に離婚したのではないことだけは分かる。 なぜなら父はいつも私の本当の母親のことを「あいつ」とか「あの女」と憎々しげに呼ぶからだ。 生きているなら私のことが気になったりしないのだろうか? ドラマのようにこっそり私の様子を見に来たりしないのだろうか? ずいぶん後になってからだが、いつだったか珍しく父が酔っ払って帰って来たことがあった。 私は中学に上がっていたと思う。 父は私に顔を近づけ酒臭い息を吐いた。 「あいつは本当にひどい女だったよな。自分が産んだ赤ん坊を気味悪がって抱こうとしないんだからな」 本当の母への淡い恋心が砕け散った瞬間だった。 父と別れるときに私を連れて行かなかったはずだ。 私はこの醜さのせいで本当の母親に捨てられたのだ、抱いてさえももらえなかったのだ。 継母に愛されないのも当然だ。 もし私がCMに出てくるような愛らしい赤ん坊だったら、継母は私を可愛がってくれただろうか? だって継母は言っていたらしいではないか、 「娘と一緒にお買い物やお料理を一緒にしたい」 って。 その夢が私と叶うはずではなかったのか?
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