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二人の兄
私の父が継母と再婚した時、父は三歳の私を連れ、そして継母は七歳と四歳の男の子を連れていた。
私には血の繋がらない二人の兄がいる。
私の四つ上の兄は薫と言い、一つ上の兄は銀太郎と言う。
私は薫兄が大好きだ。
薫兄も私のことが大好きだ。
薫兄は男なのに女のように美しい。
いや、女より美しい。
日本人にしては彫りが深く、いわゆるハーフ顔をしている。
薫兄の美しさは人間離れしている。
もし天使というものが存在するのなら薫兄の美しさは天使のような美しさと言っても過言ではない。
薫兄の美しさは神々しくさえあった。
薫兄は私の恵美という名前を英語風に「エイミー」と呼ぶ。
それを私はとても気に入っている。
薫兄はいつも私に優しかった。
私が今までなんとかやってこれたのは、薫兄がいてくれたからだ。
薫兄は私の初恋の人でもある。
私と薫兄は血が繋がっていないので、結婚しようと思えばできる。
私は子どもの頃、大人になったら薫兄のお嫁さんになりたいと本気で思っていた。
そして薫兄もそれを約束してくれた。
それに比べ銀太郎。
薫兄と同じ親を持つとは思えないほど、銀太郎は醜くかった。
私は銀太郎が昔から大っ嫌いだった。
銀太郎を見ていると、とにかく苛ついた。
自分の同類を見ているようで気分が悪い。
同類と言っても銀太郎は私とは違ってガリガリに痩せていて、いつも相手の機嫌を伺うような目をしていた。
銀太郎の笑い方も嫌いだった。
落ち窪んだ目はそのままに、ひび割れた唇から歯並びの悪い歯を覗かせながら、イヒヒと笑う。
私は銀太郎を兄だと認めてなんかいない。
弟ならまだしも、私より上の存在である兄だなんてなんだか悔しい。
歳も一つしか変わらないし、四月生まれの私と三月生まれの銀太郎では学年こそ銀太郎が一つ上でも、ほとんど歳は変わらないのだ。
実際にガリで貧相な銀太郎と太っていて態度もふてぶてしい私とでは銀太郎が弟に間違われることが多かった。
天使のような薫兄がいつも横にいるせいで、銀太郎の醜さは余計際立って見えた。
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