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薫兄と銀太郎はまるで、天使と悪魔、光と影だった。
薫兄が生まれた時から勝者なら、銀太郎は生まれた時から敗者だった。
そしてそれは私も同じだった。
薫兄と銀太郎、私の三人でいると、決まって私と銀太郎がきょうだいに見られた。
体型は違っても他人にも私と銀太郎の共通する何かを感じるのだろう。
三人ともきょうだいだと言うと皆驚き、両親が再婚でそれぞれの連れ子だと説明すると、皆納得したように頷くが、血が繋がっているのが薫兄と銀太郎で、私と銀太郎が全くの赤の他人だと言うと、皆一様に混乱した表情を見せる。
へえ〜、とそのあと何か言いたげだが、皆その後の言葉を飲み込む。
私が小学二年生になるくらいまではよく三人で遊んでいた。
学校が終わったあと、薫兄について虫取りをするのが主な遊びだった。
虫取りと言っても蝉や蝶ではない。
カブトムシやクワガタがいるような森が近所にあるわけでもないし、田んぼも畑も周りにないただの住宅街だったが、それでも当時は公園や誰かの家の庭先でいろんな虫を捕まえることができた。
薫兄が好んで採ったものは毛虫だった。
それも醜ければ醜いほど薫兄は喜んだ。
私たちが採ってきた毛虫を見て、大人たちは一応にぎょっとするが、中には
「醜い毛虫ほど美しい蝶になるからな、それを分かってるんだな偉いもんだ」
と、感心する大人もいた。
実際に私たちが採ってきた醜い毛虫は美しい蝶になることが多かった。
薫兄はそれらが醜い毛虫のうちはせっせと世話をやいたが、さなぎを経て美しい蝶や蛾に孵化すると世話を私か銀太郎に任せた。
私は熱心に蝶の世話をした。
毛虫の時は気持ち悪くてほとんど銀太郎が世話をやいていたが、美しい蝶になったら別だ。
美しい蝶は何時間でも眺めていられた。
私は蝶の他にもきれいな石を集めるのが好きだった。
きれいな石をきれいな蝶の入っている虫籠に入れるとそこだけ別世界になった。
一度銀太郎が私の大事にしている蝶を逃してしまい大変なことになったことがある。
それ以来、蝶の世話は私だけがやるようになった。
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