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入学式から帰ると、庭先で加藤君への恋心が芽を出していた。
私は大急ぎでそれを隠そうとするが、彼の事を意識する度にぐんぐん成長してしまう。その光景を見かねた母が笑った。
「あらあら、私の娘にもやっと春が来たのね。それは思いの竹。あなたの気持ちを糧に成長するの」
そんなこと言われたって、私はかぐや姫じゃないんだから、彼に上手くアピールだってできやしない。片思いを伝えられないまま、慌ただしく一学期は過ぎていく。しかしその間にも、月まで届きそうな勢いで竹は大きくなっていた。
「おお、本当に先が見えない。っていうかなんか今もどんどん伸びてね?」
梅雨が明けた頃、私の家にはなぜか加藤君がいた。学校からも見えるぐらい天高くそびえ立った竹は、町内の噂になっており、それを間近で見てみたいと彼が言い出したのだ。
ああ、もうここしかない。私は少し背伸びをして、大きく息を吸い込んだ。
「私、加藤君のことが!」
春先につけた短冊が天の川まで突き抜けた。
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