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雪が降ると思い出すのは、ある年の大雪の日のこと。
一面が真っ白に覆われて、道も、田んぼも、畑も見分けがつかなくなったあの日、私は君に出会った。
私は久しぶりの雪に少し心を浮つかせながら歩いていた。
吐く息は白く、指先は凍りつきそうだったが、足取りは軽い。
そんな私と君は初めてすれ違った。
互いに相手を知らない状況で、どちらも雪景色に心躍らせていたのに気がついて、一時の雪遊びに興じた。
一息ついてますます雪が強くなってくる中あたりを見渡す。
だが再び君のいた方を見るとそこには誰もいなかった。
雪がすべてを覆い隠して、まるで最初から私一人切りだったかのようだった。
私はしばらく君を探したが、とうとう見つけることはできなかった。
あれは幻だったのだろうか?
私は仕方なくひとり家へと帰る。
翌年の春、用水路に転落して足を骨折、雪に埋もれて凍死した女性のニュースが流れた。
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