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新たな出会い
この俺、禅内仁が心機一転で頑張る決意をして以来一週間が経った。
秋葉原にある電化製品店のバイトを必死に頑張るようになってからは、嘘のように生活パターンが一変したのだ。
帰宅してからゲームばかりしていた頃とは違い、自炊の仕方や洗濯物を洗う手順も覚えて日頃の健康にも気を付けながら、ゲームも一日一時間で終わるようになったから。
「…この一週間ずっと見てきたけど仁。あなたとことん変わったわね~」
今日は仕事が休みなので、今は自宅でくつろいでいる。
「そうか?」
「そうよ。実際今日のあなたのステータスをこちらで見させてもらったけど、変化がたくさん出てるわよ?」
「マジか!よし、この選択物干しが済んだら俺も見てみるか。」
ポチッ…ヴォン!
ステータス表示
禅内 仁(25歳) レベル8
体力(HP)300(↑) スタミナ200(↑)
攻撃力120(↑) 精神力(MP)70(↑)
防御(忍耐)力120(↑) 器用さ270(↑)
賢さ(↑)1000 魅力50(↑)
:スキル
責任転嫁→責任感(↑)
嘘八百→誠実(↑)
状態異常耐性+
ステータス閲覧
詐欺トーク→商売話術(↑)
ゲームプレイスキル
不屈の意志
悪口→愚痴(↑)
:称号
鉄のメンタル(↑) 強い責任感(↑)
熱心な若者(↑) まともな人間(↑)
商人の卵(↑)
閲覧者 異常耐性所持者
「……おお」
「ね?」
「こんなに変われるんだな俺…でも愚痴はしゃーねーんじゃねーか?」
「まあそこはひねくれた神経がまだ多少残ってるだけだから、簡単には消えそうに無いわね。」
「チェッ…」
「ふふ!でも仁。このたった一週間でこれほど変わったんだから上等なんじゃない?」
「へっ!そうだな……よし、ちと気晴らしにブラブラ外出してみるか。」
「オッケー」
・管理者ゼノンはこの一週間、二人のやり取りや仁とシアンの変化を見て、少し嬉しそうに眺めていた。
「ホホウ!アノ者達、ナカナカヨイ相性デハナイカ。ハジメハ反発シアッテイタガ、アノ者…仁ノ本心ヲしあんガ受ケトメ向キアエタ。
コノ先、ドウ変ワルノカ楽シミデアルナ。」
彼はモニター越しに、二人の様子を和やかに見てのち仕事の続きに戻っていく。
・所変わって、仁達のいる世界でちょっとしたトラブルに二人は出くわした。
「キャッ!やめてください‼︎」
「おいおい良いじゃねぇかかわいこちゃん!俺とそこの路地でちょっと遊んでいこうぜ?」
「い・や・で・す!」
「チッ…このアマさっさと来いや‼︎」
「やだぁ‼︎」
「…アーア、朝から下らねぇモンを見ちまったなぁ。
おいおまえ、そんだけ嫌がってんだから諦めてやれよ。ダセぇ男だな」
「お?何よ仁~。あんたが他人に説得できるようになるなんてねぇ~」
からかい半分の声かけだが、今取ろうとしている俺の行動を見てシアンは更に見直したようだ。
「う、うるせぇなシアン!」
「…ああ?なんだてめぇこら!俺の楽しみ方にけちつけんじゃねぇよ‼︎」
「だ、ダメです…逃げてください!」
「はあ、絡んじまったんだからにげようもねぇだろ?シアン、あの女の子を守っててくれるか。」
「ええ、任せなさい‼︎」
「カッコつけてんじゃねぇぞクソがぁ~!」
「行くぜ!」
「うん!」
シアンは一度ぐるりと野郎の後ろに回り込み、近くにいる女の子を守る電気バリアーを張った。
「へっ!」
俺は奴の大振りなパンチを余裕で避けてから足払い、次に馬乗りになって野郎を叩きのめした。
「いでで‼︎やめろや!」
「お前が人にこんなダサいちょっかいを二度と出さないって約束するんならやめてやる…よ‼︎」
「する…するって‼︎だからもうやめろ⁉︎」
俺は殴ってる手を止めて、奴から離れたその瞬間…思わぬ反撃を食らった!
「…バカが‼︎」
バキ!
「ガァ‼︎」
今度は俺が馬乗りにされ、強烈なパンチをくらい続けていく。
「ケッ!パンチが弱いくせに強がんなよボケ‼︎おらおらおらおら!」
「ゴホッ!…お前も、ほんっとダメなクソ野郎だな。
最近までの俺となんか似てるわ。」
「は?なにいってんだてめぇ。」
クソ野郎は思わず殴る手を止めた。
「俺はお前みたいに外に出てこんな迷惑をかけたことはなかったがよ、やり場のない怒りを何かにぶつけてないと気が狂いそうな事が何度もあった。
……お前も今そうなんじゃねぇか?」
「……」
「もし俺の今言った言葉が気になるならまず降りろ。その後今のお前の心境を当ててやるぜ」
「…良いぜ、当てられるもんなら当ててみろよ。」
やつは一度、俺からどいた。
「シアン。悪いがこいつと二人で話がしてぇから、その子をつれて先に離れててくんねぇか?」
「わ、分かったわ!…さっ、あなたは私と一緒に来て?」
「は、はい…」
女の子は心配そうな顔で俺を見ながら、この場を去っていく。
「じゃあ今から話してやるよ。お前が本当に苛立つ理由をな」
「おうこいや」
こうして現在、二人で会話して一時間が経った頃。
歩道の隅で俺ら二人は座って共に泣いていた。
「うわああぁ‼︎仁の兄貴、俺は……俺はあぁ!」
「…ああ、お互い苦労を知られないことほど辛かった者はねえよな?」
泣いてる奴の肩を優しく叩きながら、俺も泣いているという雰囲気になぜかなってしまっていた。
「……な、何があったの?あんたら」
戻ってきたシアンにも、この雰囲気は正直理解できなかったらしい。
「兄貴…俺決めました!いっぺん警察に自首して来ます。んでもって、今日までやって来たこと全て話して一からまたやり直してみせます。
本当にありがとうございました!」
「おう。もし出所したらまた再会しようぜ?」
「はい!」
ヒシッ!と、俺達は抱き合っていた。
そして彼は立ち上がり、清々しい顔をしながら通行人達が思わずビックリして一度振り向いてくる事を気に止めることなく、まっすぐ交番へと歩いていった。
「ねぇ、何を話したらあんなに変わったの?あいつ」
「ん?ああ、大した話じゃねぇさ。あいつも俺と同じで、家族のプレッシャーに負けて自身の価値観が見えなくなった事を向こうも語りだしたんだよ。
それをお前が俺に向けて初めて泣いてくれたように俺もあいつの過去を聞いて泣いて受け止めた。ただそれだけだ……」
「そっか!ほんと、あんたって大した人に育ちはじめたわね。
でも流石にその格好はさすがにマズイよね?明日の仕事…とか」
「…あ」
「「……あははは‼︎」」
二人して、今の状態を見て思わず共に笑っていた。
このあと俺達は事の顛末を休み中の店長に会って伝えたら驚かれ、治療の為に三日ほど休むよう言われた。
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