それからの日々

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愛情というものをもらった。 それはとても大きく、そして儚い、幻想的なものだった。 あたたかい家。あたたかい家族。あたたかい居場所。 心温まるそこは、きっと、かけがえのない場所にちがいない。 「ごめんね。──。ごめんね」 家族が泣いて謝ったのは、雨の降る日のことだった。 病院と呼ばれる場所にて検査を受けた私に、異常があった。 それを治す術がない、というところが現実的なお話だろう。 (大丈夫。気にしないで) 私は告げる。精一杯。 けれどその言葉はきっと、彼らには届かない。 知っている。それが当然のことだから。 雨が止んだ日、私は外へと脱け出した。 もうすぐ止まってしまう心音に、気がついたからだ。 私は私の死体を彼らには見せたくない。 だから出て行く。この日をもって。 これが世に言う、サヨナラだ。 外に出て、やって来たのは思い出の詰まった小さな公園。私はそこの滑り台の下、丸くなって小さくなる。 ねむい。とても。眠たかった。 「──!」 声がした。私に付けられた名を呼ぶ声が。 涙に濡れたそれに顔を上げようとすれば、それが動かなくて落胆する。 もう動けないのか。 理解した瞬間、死という概念が差し迫ってくる。そんな気がした。 「──! なんで一人で逝こうとするの! 最後くらい家族として一緒にいてよ! この大馬鹿もの!」 私を叱る母の声。息を切らす父の音。 ああ、ごめんなさい。ごめん。ごめんね。 けれど見て欲しくなかったんだ。 きっとあなたたちは、とても悲しんでくれるから。 それが私にとっては幸福なことで、でもすごく悲しいことだから。 「にゃあ……」 最後の一声を振り絞り、重くなった目を閉じる。 最後まであたたかさをくれた彼らのそれからの日々を、私はこれから期待している。 どうか幸せになってくれますように。 ありがとう。
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