SCENE1

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SCENE1

 まだ、帰ってこない。ため息をついて、意味もなくスマホの画面をスライドしたり、ゲームアプリを開こうとしてやっぱりやめたりする。  せっかく、同じマンションに住んでる凌太やリーダーもいないの確認して、俺自身の予定もバッチリだったのに、これだもんなあ。  キャップ越しに頭ガリガリかいて、一瞬タバコ吸おうと思ったけど、ここはマンションの廊下。携帯灰皿なんか持ってねえ。またため息ついて、ぼんやりスマホの画面を眺める。  村田、そろそろ稽古も佳境なんだろうな。今日もびっちり稽古か、それとも飲みか。飲みだろ、たぶん。あのメンバーでの飲み、正直うらやましいわ。  今が夏の初めでよかった。用が用だから事前にLINEとかできねえ。もうこうなったら、何時間でもこうして待ってやるんだ。  その場に体育座りして、手土産のつもりでコンビニで買ったビールを開ける。がらんと乾いた無愛想な廊下に、待ってました! と言わんばかりの元気のいい音。  やれやれ、空回ってるなあ。俺みてえだわ。  なあ、知ってんだぞ凌太。俺だってそれぐらい自覚してる。だけど、どうにもなんねえんだ。好きなもんは、好きなんだ。  俺は村田が好きだ。知りあってからずっと、なによりも欲しいものであり続けている。きれいで、目が離せない。
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