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1998年
夫と出会ったのは、高校生三年生のときだった。
同じクラスで、席替えで私の前の席にブスッとした顔で机を持ってきた。
そこは教卓の目の前の席だった。
夫には友達がたくさん、それもお金持ちで頭のいい子ばかりいた。
夫自身も当然例に漏れていなかった。
一方私はというと、クラスの中ではトップレベルに地味でダサかった上に成績は普通。
そんな私に夫はある日突然話しかけてきた。
最初は、私なんかに話しかけてくるなんて変わった人だと思っていた。
私の数少ない友達の一人から、
「最近あの子と仲良くない?」
と聞かれたときだって私は、
「何でか、後ろ向いて話してくるんだよね…」
と答えた。
けどそれが毎日毎日何度も続いていくうちに、俯いていても、前の席に意識が向いてしまうようになった。
その気持ちは恋とも少し違っていた。
多分私が男だったとしても彼に同じ気持ちを抱いていたと思う。
話しかけてくれるクラスメイトができてうれしい反面、残念な子が相手をしてもらっているような惨めさがあった。
しばらくして次の席替えの時には席が離れた。
遠くに机を運ぶ彼の背中を見ながら、私はホッとした。
これで心穏やかに過ごせると。
夫はあっさりと私に話しかけなくなり、そのまま卒業を迎えた。
うちの高校は一応地元のトップ校で、有名大学に進学し、大手に勤める人もたくさんいた。
家庭科の先生が高校のOGで、同級生と付き合ってると聞いたときには、
この学校で結婚相手を見つけたら勝ち組だよな
と、ボンヤリ考えていた。
まるで他人事だった。
まさか自分がそうなるなんて夢にも思っていなかった。
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