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「ミズキ君って、頭いいのに時々馬鹿だよね?」
「うっさい!自分でも思ってるっつーの、わざわざ言うな!」
そして、その日の夕方。僕は、一番の友達であるコータと一緒に神社の前にいた。テストだとか、運動会だとか。とにかく負けられない戦いの前に、必ず神頼みをする神社である。お賽銭箱の前で、僕達は肝試しの企画について話し合っていた。怖いものなんか何もない、と言ってはばからないテツジをなんとしてでもギャフンと言わせてやりたい。そして、自分のことを今度こそ認めさせてやりたい。
ただ、いかんせん怖いものから逃げ続けてきた僕である。あのテツジを本気で怖がらせられるような企画を一人で考えられる自信はなかった。実際テツジが言う通り、大掛かりな設備や準備を考えるならば、一人でやるには限界があるのも事実である。友達の、特にコータの助けは必須と言っても過言ではなかった。
「確かにテツジ君の言い方はあれだったけどさあ。ミズキ君もヒートアップしすぎだって。墓場に夕方や夜に子供がうろついてたなんてバレたら、お母さんや先生に大目玉食らうよ?ていうか、最近は男の子でも関係なく変態に狙われるっていうし」
「ふっかけてきたのはあっちだ。悪いのはあっち」
「どっちもどっちでしょーが。……まあ、約束しちゃったものはしょうがない。今回だけで終わるように、しっかり企画考えることにしますかねー。あー僕ってば優しいー」
「うぐぐ……」
コータが言うことは正論すぎて、僕は何も言うことができない。後先考えずに約束してしまったのは確かだ。しかもその都合に友人を巻き込んでいるし、なんだかんだコータも積極的に付き合ってくれている。全部終わったら、ポテチ一袋奢るくらいはした方がいいかもしれない。
「で、真面目な話するけどさ。自覚してる通り、ミズキ君は超絶怖がりだろ?でも怖がりってことは、怖いものがなんなのかよく知ってるってことでもあると思うんだよな。企画を考えるの、かえって得意なような気がするんだけど」
段差に賽銭箱の前の階段に腰掛けて、足をぶらぶらさせるコータ。若干罰当たりなのかもしれないが、今回は許してもらおう――と僕も隣に座ることにする。
「ミズキ君が一番怖いって思うものをまず挙げてみなよ。それを再現していったら、きっとテツジ君も怖がってくれるんじゃないかと思うんだけど。あ、ちょっと怖い、じゃなくて……一番怖い、レベルのものね」
「一番怖い、か……うーん」
僕は名探偵のように、顎に手を当てて考える仕草をする。
「思ったんだけどさ。肝試しっていうと、昔からのイメージで墓場にオバケ役の人が隠れていて怖がらせる”っていうのが定番って印象あるんだよな。児童小説とかでも出てくるけど、ほら……布を被っておばけーってやったりとか」
「あー、そういえば教科書でもそんな話あったような。あれ怖いかなあ」
「正直、不意打ちならびっくりするとは思うけど……怖いと思っても一瞬だなって思うというか。だって布被っておばけーってやっても、オバケじゃないのすぐわかるだろ?人間がやってるチャチなおばけのフリってかんじで。あれは、僕であってもそんな怖いと思わないなーというか」
「確かに」
不意打ちでびっくりさせる、というのはアリだと思う。けれどびっくりさせてすぐ“なんだ偽物か”では怖さも半減だ。
不意打ちでびっくりさせた後で、それが本物のお化けにしか見えなかったら――絶対に怖くてたまらなくなると思うのだけれど、どうだろうか。
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