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仕事はパッとしないし、婚活にも疲れた。そんなときに出会ったのが彼だった。
1年間の不倫の後、わたしたちは結婚した。
「俺、お前と結婚して本当に良かった」
彼は上機嫌だった。パジャマ姿でソファに座ってリラックスしている。
かたや、わたしは残業でさっき帰宅したばかり。
台所のシンクには、朝食で使った食器類がそのまま置いてある。
「毎日、肉が食えるし、ビールも飲めるんだから」
彼は実に嬉しそうに飲んだ。
つまみはから揚げ。わたしは気を使って枝豆も出しているんだけど、彼は手をつけない。
「あいつは野菜や魚も食えってうるさいんだよ。母親じゃあるまいし。その点、お前にはマジ感謝してる」
あいつ、というのは、彼の前妻のことだ。
「でも残業続きでロクにご飯支度できなくて、ごめんね」
わたしは謝った。
彼と結婚したとたん、わたしの勤める会社の売り上げが伸び、仕事が忙しくなったのだ。
「こうやってビール飲んで待ってるから気にするな」
彼は本当に優しい。
わたしの稼ぎの方が高いのに嫉妬しないし、手料理にもケチをつけない。
何より、わたし以外の女の臭いがしない。
世間から見れば、今のわたしは幸せだ。そうとしか言えない。
ただ、彼のでっぷりしてきた腹と、部屋に脱ぎ散らかされた衣類を見ると、どうにも違和感がぬぐえない。
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