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視線 二
でね、この家に入ってみて、なんだか気持ち悪いのがあったんです。どこからか、視線を感じるんですよ。その方向を見たらね、鉄道模型。
何だ? と思ったら、情景の中の人形なんですよ。掌に収まる位小さいんだけど、精巧に出来ているんですよ。 ……まるで生きているみたいに。
顔の表情なんて分かりません。でも、なんだか睨まれている感じがするんです。
でしょ? そんなバカなって思うでしょ?
でも本当にそうなんです。人形達に睨まれてる気がするんです。
居間に彼がいたかって? ああ、はい、いました。
入るとすぐ、東京ドームの模型がありました。大きかったですね。野球盤ってゲームがあるじゃないですか。それを何倍も大きくした感じです。
その周りに遊園地。手前に駅。『水道橋駅』とありました。駅の中に人形達がひしめいています。黄色い電車の模型が、丁度ホームに入っていました。
『足元に気を付けろ。そこ配線あるからな』
下を見るとタップがタコ足配線で埋まっていて、埃を被っています。焦げ臭い匂い。
大丈夫かこれ? と訊くと、あいつ、気にするなって、即答されてしまいました。
でも、何かが違う。無数の視線が、私を突き刺している気がするんです。いや違う。そうじゃなくて、彼に対しての視線なんですよ。
どこから? 駅から? 人形?
駅から電車から、無数の人形の視線が集まっている?
『この世界は俺が作ったんだ。俺の世界だ。どうしようと俺の勝手なんだ。そうだろ?』
奴の声が聞こえると共に、ガシャッと、何かが落ちる音。
見ると、先程停まっていた筈の電車が、奴の張り手で、線路の外に飛ばされていたのです。
何をやってるんだ? 私は思わず叫びました。
『いいじゃないかよ。俺が作ったんだ。何しようが俺の勝手だろ? 余計な口挟むんじゃねえよ』
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