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視線 三
すると、なんだか視線が強くなったような……下から。いや、駅から。
そうじゃない! 部屋の中から全てだ!
無数の視線、とげとげしく突き刺さるような、怒りの視線だ!
奴に落とされた電車の中から。ここで気付きました。いつもこんな事をやっていたのか。だから、人形たちに恨まれているのか。
目力って言葉があるじゃないですか。
それで、なんでも出来るって。
出来ないことなんて、無いんだって。
ひょっとして……?
こいつら、あいつを恨みの視線で、殺すつもりなのか?
ここで一緒にいたら一緒に殺されてしまう?
沸き起こる嫌な予感。段々強くなってきます。
焦げ臭い匂いが強くなり、煙も見えました。
ごめん。用事思い出したから帰る、と適当なことを言って、急ぎ逃げ帰る事にしました。
『おい! 逃げんなよ! 』
あいつの声がしましたが、聞いてられませんでした。
……私も殺される!
玄関を出ようとした時。奴の部屋から、ドンッ、と大きな音がしました。
何かが爆発したようです。
熱気が強い。
その時、私は部屋の外にいた為無事だったようですが、
爆風なんてものを、私は初めて経験しました。
吹き飛ばされる!
死んでしまう!
もう、一目散に逃げました。こんな事で奴と一緒に殺されてたまるものか。
逃げた私は遠くから、奴の家を見ました。
私は初めて建物が爆発する瞬間を見ました。
死ぬかと思った。
あいつは死んだ。殺されてしまったんだ。
でも奴は、あの部屋で爆発に巻き込まれ、あの無数の人形達に巻き込まれて殺されたのではないでしょうか?
あれからは、私は分かりません。奴の家に行こうとも思いません。申し訳ございません────」
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