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「君がここに呼んだんじゃないか」
「……えぇ、そう。ここは──貴方に告白された、思い出の場所だから」
当然、覚えている。五年前のバレンタインデーの日の事だ。
「私がチョコを渡して告白する──筈だった。なのにあなたは、私がチョコを渡す前に、私に向かって告白してきた」
「………………」
好きです、付き合ってください。バレンタインデーに男性からという状況を除けば、テンプレートのような告白だった。
彼女はしばらくの沈黙の後、『私の台詞、取らないでよ』と照れながら、丁寧にラッピングされたチョコレートを差し出してきた。
「あの時は本当、嬉しかった。あの日から私は幸せだった。だからプレゼントなら、またあの日みたいにここで渡してってお願いしたの」
今でも明確に思い出せる。あの日の空が、今と同じように鮮やかな夕日であったことも。
だけど、覚えているだなんて言えるわけがない。
「それ、他の男と間違えてない?」
「────っ!!!」
右の頬に熱い衝撃が走った。
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