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はじまりはじまり
それは、とある春の日のことでした。
のぼりたての太陽があたりをくまなく照らし、方々の梢から鳥のさえずりが聞こえる、よき一日を予感させる朝。王宮の一室では開けはなたれた窓から、まっさらな空気がとりこまれていました。
「あ、結婚しよ」
天蓋つきのベッドでパチリとまぶたを開いたロラン王子が、普段と違ってすばやく体をおこし明瞭な声をあげます。
おおよそ寝起きの第一声とは思えない発言に、世話係のアルマンは小さくため息。冷めたまなざしとほのかに刻まれた眉間の皺は不機嫌じみていますが、それでも友人同然のロラン王子からみれば今日は少し機嫌がいいと感じとれる面持ちです。
「どうしたんです。おかしな夢でも見ましたか」
「ていうか兄上が王位継承しちゃうのはいいとしても、国民の好感度くらいは負けたくないじゃん」
「……まあ、品格才覚どこをとっても、レオン王太子殿下は非のうちどころがない完璧な方ですからね」
猛然、立ちあがったロラン王子が絹製のねまきを脱ぎすてました。あらわになった白い肌は傷ひとつなく輝かんばかり。日頃の鍛錬のかいもあり、それなりに引きしまっています。
「だから俺のほうがしっかりしてるって、みんなにアピールすんの。全部負けっぱなしなんて絶対に嫌だし!」
「そうですか」
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