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「その前にミヤ姫に好いてもらえないと、ただの誘拐になってしまいますよ」
アルマンの指摘をロラン王子が鼻で笑います。
「心配ないって。だって俺だよ? ゆうても王子だよ? 地位も名誉もお金もあるんだよ? 好かれて嫌がる女の子なんているわけないじゃーん!」
「殿下」
「そりゃ駆け落ちしたら全部なくなるけど、顔だってイケメン言われる部類だし、それに……」
「殿下」
言うが早いか、アルマンの指がロラン王子の腕のつけ根に食いこみます。
「痛い痛いっ、なにすんの!」
「聞いてください、殿下」
「聞くよ! でも、グッてすることないじゃん!」
「そこを押すと肩が楽になるそうですよ」
「なるそうですよ、じゃないよ! こういうの良くないっていつも言ってんでしょ。誰かに見られたらどうすんの。アルマン懲罰もんだよ。俺ってば腐っても王子なんだから」
「大丈夫です。時と場所と相手を選んでますので」
「よけい悪いよ! そもそも、なんでも力業で解決しようとするのアルマンの悪い癖だからね。前に俺が隣国に忍びこもうとした時も……」
面倒な過去をむし返される予感に、アルマンが皿にあった小ぶりな楕円形をロラン王子の口に押しこめました。料理長の最近の新作でダ・コワアズという焼き菓子です。
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