はじまりはじまり

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 ロラン王子はむぐぅと(うな)り目を白黒。そうして、さっくりとしたアーモンド風味の生地と、それに挟まれたクリームの絶妙な調和が口腔内に広がったところでバタンとテーブルにつっぷしました。 「ううう……腹立つのにお菓子が美味しすぎて怒るに怒れない!」  (なげ)く背中を切れ長の目がとらえます。 「私は結構ですから残り全部どうぞ。殿下、これ気に入っていらっしゃいますよね」 「えっ、いいの? ありがと! そうなんだよ、本当に美味しくてさ。初めて食べたとき俺は震えたね。うちの料理長天才すぎる……じゃなくて!」 「なんですか」 「なんですかじゃないよ、まんまと餌付けされるところだったよ! あのね、俺はね、お菓子でつられるほど安い男じゃないんだからね!」 「いらないなら私が食べますけど」 「いるよ食べるよ!」  お菓子を頬張るロラン王子に、計算づくと言わんばかりアルマンが横目。 「ところで、殿下」 「なに」 「しんどいです」 「なにが」
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