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つと視線をあげたコルトの瞳に映るのは嬉々とするロラン王子。「待っててミヤ姫、すぐ会いにいくからね!」と、いっさん城へ戻るさまは無邪気そのものです。
「……あまり問題ないように思います」
「じゃあ、それでいいんじゃないかな」
小さくなっていく背中が完全に見えなくなったころ、先ほどまでロラン王子のいた場所にアルマンが着席しました。
「ともかく助かるよ。コルトの協力がないと、かなり困難な計画になるとこだったから」
「いえ、私はそんな……」
自分用のカップにお茶をそそぐアルマンに対し、コルトが自然と俯きます。
「本当に大丈夫なんですか、こんなことして」
「心配ないよ。今のところすべて順調に進んでる」
「でも……」
「それに俺たちには味方もいる。とびきり心強いのがね」
不敵な笑みを見せられたコルトは、それ以上なにも言えなくなってしまいます。
「一息ついたら俺たちも準備しよう。すぐには帰ってこれそうもないから、そのつもりで」
そう言ってカップに口をつけるアルマン。濃灰色の癖毛がふわりと風に揺れます。
「……そうですね」
倣い、コルトもカップをとります。琥珀色の水面に映りこむのは、どうにも不安げな面持ちでありました。
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