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東の果ての
踏みだすごとに足下の土と周囲のさまざまな植物が香り、親しみのないそれらが非日常を実感させます。
頭上を覆うように茂る鮮やかな新緑の隙間からは午後の陽がうらうらとさし、鬱蒼とした山道でもさほど陰気さはありません。
坂のむこうから吹きおりる風が、汗ばみかけた体を心地よく冷やします。
「はるばる来たよ東の果て、ニリオン、ニリオン……!」
自作の歌をくちずさむロラン王子の両脇には、アルマンとコルトが控えます。出立このかたの浮かれどおしに、ことアルマンは臆することなく辟易顔ですが、当人は意に介さず軽やかな足どりです。
離宮での算段から約一週間。彼らはニリオン国の城下町にほど近い山中を歩いていました。まずはじめに町を俯瞰したい、というアルマンの要望で到着場所をそこにしたのです。
「大げさなんですよ。移動は一瞬だったんですし」
アルマンが冷淡に流れをぶった切ります。ロラン王子の悪意ない発言が、ときに無自覚に他者を傷つけるのを未然に防ごうとしてのことでしたが、くり返される単調なフレーズで食傷だったのがにじみでてしまい、思いのほか主人の機嫌をそこねてしまいます。
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