東の果ての

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「やめてよ、せっかくいい気分で歌ってたのに」  気色ばむロラン王子が「アルマン細かすぎ」と文句をたれます。相手の真意をくみとることには疎くても感情は過不足なく察知できるうえ、へそを曲げたときはしつこいので厄介です。  ため息のひとつでもこぼしたくなったアルマンでしたが、今回に関しては自分の油断がまねいたことだと反省。すぐさま話を転じます。 「それよりも先を急ぎましょう。ざっとでかまいませんから、明るいうちに町のなかも見ておきたいので」 「わかってるよ。だからこうして道草せずにいるんじゃん。てか、遠くから来たのには違いないんだし『はるばる』言ってもいいじゃん。そのほうが頑張った感じするじゃん。なんだかんだで日数かかったんだし」  アルマンの危惧どおり、しょげたコルトが頭をさげます。 「申し訳ございません、私が至らないばかりに……」  ここでようやくロラン王子も、自身が不用意だったことに気づきます。  空間移動の得意でないコルトの魔力回復のため、ロラン王子たちは途中三つの国に滞在しました。そのことについて誰もコルトを責めていなかったのですが、本人はふがいなさを深く恥じいっていたのです。
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