東の果ての

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「違うよ、ごめん。そういう意味じゃなくて。俺としては、もっとのんびりペースでもよかったっていうか。めったにない旅なんだから満喫したいよね」  この発言はコルトを思いやってのものだけでなく、ロラン王子の本音でもありました。  実際、各国で一泊ずつとアルマンが計画していたのを最初の経由国で聞かされた時も、「なにがなんでも最低二泊ずつ!」と大通りのまんなかで五体を地に投げだしギャーギャーわめきたてるという、大人にあるまじきゴネっぷりで譲らなかったほどです。  なかでも最後に訪れた国はとくにお気にめしたらしく、いまだに後ろ髪をひかれていました。 「あーあ、あと二三泊したかったな。女の子はかわいかったし、食べものも美味しかったし」 「首都は発展してて活気があるのに、少し離れると自然があってさ。みんな大らかで気さくで、いい人ばかりだったよね」 「そもそもアルマンの作った予定表、ぎっちぎちで無理があるんだよ。強行軍じゃあるまいし」 「けどまぁ、しかたないか。今回の目的はあくまでもミヤ姫だもんね。早く着けば早く会えて、早く結婚できるわけだからさ。その点は評価しないと」 「そういやニリオンの名物ってなんだっけ。たしか生食の文化があるんだよね。なじみがないけど慣れといたほうがいっか。なんたって婿入りしなきゃなんだから」
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