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レオン王太子は幼少時から勉学にも剣術にも優れ神童と呼ばれていたうえ臣下からの人望もあつく、誰もが次期国王にふさわしいと認める人物でした。
最初のうちはロラン王子も、そんな兄を自慢に思っていましたが、しだいに比べられることが増え劣等感を覚えるようになると苦手をとおりこして嫌悪の対象となり、一瞬たりとておなじところにいたくないと思うようになったのです。
そのため、たとえ一人寂しくなろうともあえて家族と食事の時間をずらしていたのですが、ともに暮らしているのですから出くわすことはいくらもあります。
「どうかしたのか」
「イイエ、ナニモ」
ロラン王子は顔をそらし、ぎこちなく返しました。苦虫を噛みつぶしたようになるのを無理におさめると、どうしても片言喋りで白目がちになってしまうので隠すのに必死です。
レオン王太子は几帳面に整えられた黄金色の髪の下、意志の強そうな眉を怪訝にひそめます。
「以前から思っていたがお前の喋り方、少し妙じゃないか」
「ゼンゼン。マッタク」
「どこか具合が……」
「オ腹スイタノデ、ゴハン食ベテキマス」
逃げるようにその場を離れ、ロラン王子は食堂にむかいました。
今に見てろよこの兄上野郎、という文句を胸に秘めて――。
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