あの時は、君じゃなくても良いと思っていた。

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初めて目が合った時、同族だと思った。 新たな出会いを求めて開かれた合コンの中にも、乗り気ではなく友達に連れて来られる人もいる。 私と彼がそうだった。 付き合いが悪くなると後々面倒なため、友達との関係継続の為に参加を決めたようなものだ。 頃合いを見て適当に嘘をつき、その場を抜け出せばいい。 そのように考えていたけれど、より現実的な嘘をつけそうだ。 彼は私と目が合うなり、躊躇いもなく隣に腰を下ろしてきた。 「おっ、裕翔(ゆうと)が選ぶなんて珍しい」 真っ先に私の隣に座ったことで、男たちに囃し立てられている。 けれど彼は表情一つ変えない。 目に光が宿っておらず、冗談でも楽しそうな様子ではなかった。 「美羽(みう)の隣の男性(ひと)、かっこいいね」 左側に座るのが彼。 対して右側に座っている友達が、そっと耳打ちしてきた。 確かに顔は良い。 生気こそ感じられないが、整った顔立ちをしているのがわかる。 「そうだね」 友達の言葉に頷きはするけれど、正直どうでも良かった。 どれだけ顔や性格が良くても興味を一切抱かないのだ。 自分でも思う。 何ともつまらない人生だろうかと。 「それでは! 俺たちの出会いにカンパーイ!」 全員の席が決まり、従業員にそれぞれが飲み物を頼む。 殆どがアルコールを頼む中、私はジンジャエールにした。 「美羽、お酒飲まないの?」 「今日は調子が悪くて」 適当についた嘘だったけれど、深く追及されることはなかった。 私がお酒を飲むか否かというのは、彼女にとってどうでもいいのだ。 メインは良い男を見つけることなのだから。 ムードメーカーらしき男の言葉で、本格的に合コンが始まった。 本当につまらない。 恋人を作ることがそれほど大事なのだろうか。
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