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レインは『青い空』を探しているのだといった。
それは伝説だ。シンは苦笑する。誰も見たことがない。
「誰も見たことかないのなら、どこかに存在するかもしれないじゃない」
迷いのない声は誓いのようでもあった。
青い空は、レインの瞳のような色をしているのかもしれないと、思った。
「そうかもな」
「シンは探し物はないの?」
「……オレか?」
少し考えて──「探し物を探す旅をしているのかもな」と答えた。
街から街へ。
シンは『組織』から逃れるため、レインは男たちから逃れるため。
お互い生い立ちや事情を語り合ったわけではないが、自然と行動を共にするようになった。
友達や相棒ではなく恋人や夫婦でもない。
ただ一緒にいるだけの存在。
知らない街のふらりと立ち寄った飲食店には、ステージがあった。
「演奏者が急にバックレたんだ。おかけで今日のショーは台無しさ」
店の主人はへへっと笑い、瓶から直に酒を飲む。
明日も知れない世界で人はみな酒に酔う。変わらない現実を直視できずにいるのだ。
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