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半年経って、異形が増えた。
異形が子を産んだという意味ではない。
新たに、人から異形になる者が、徐々に増え始めたのである。
皆、次は自分ではないかと、恐れ始めた。
私も怖くなった。
どこかで、『異形の素は菌であって、異形から伝染する危険がある。』なんて噂を聞いた。
それを鵜呑みにする訳では無いが、私もあまり近づかないようにしようと、思った。
朝刊を眺めてみると、扉の右上にでかでかとした見出しで、
『異形の中学生、同級生に暴行。』
とあった。
私は、異形に対して、身の危険を感じるようになった。
それは、人々もまた同じだったようで、その事件の後から、異形を社会から追放しようという動きが、強まった。
異形やその家族を襲う事件も、日常的に起こるようになった。
仕方ない。そう思った。
これだけ世間を騒がせれば、その位のことは起こってしまう。
そういえば、少し前まで流行っていた『化け物タレント』達も、めっきり見ない。
それからひと月。
国は『異形保護法』を作り、専用の施設に隔離するようになった。
中には「人権侵害だ」という声もあったが、まあそんなのは相手にされない。
当たり前だ。みんなのためなら、多少の犠牲は仕方ない。
それに、ヤツらは化け物だ。
人間と、化け物。
どちらが優先されるかは、目に見えている。
直に、全ての異形が施設に行くだろう。
そうなれば、この社会は元に戻る。感染源が居なければ、異形化する人も出ないだろうし、また平和が訪れるだろう。
そう思った。
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