人でなし

2/3
前へ
/3ページ
次へ
 半年経って、異形が増えた。  異形が子を産んだという意味ではない。  新たに、人から異形になる者が、徐々に増え始めたのである。  皆、次は自分ではないかと、恐れ始めた。  私も怖くなった。  どこかで、『異形の素は菌であって、異形から伝染する危険がある。』なんて噂を聞いた。  それを鵜呑みにする訳では無いが、私もあまり近づかないようにしようと、思った。  朝刊を眺めてみると、扉の右上にでかでかとした見出しで、 『異形の中学生、同級生に暴行。』  とあった。  私は、異形に対して、身の危険を感じるようになった。  それは、人々もまた同じだったようで、その事件の後から、異形を社会から追放しようという動きが、強まった。  異形やその家族を襲う事件も、日常的に起こるようになった。  仕方ない。そう思った。  これだけ世間を騒がせれば、その位のことは起こってしまう。  そういえば、少し前まで流行っていた『化け物タレント』達も、めっきり見ない。  それからひと月。  国は『異形保護法』を作り、専用の施設に隔離するようになった。  中には「人権侵害だ」という声もあったが、まあそんなのは相手にされない。  当たり前だ。みんなのためなら、多少の犠牲は仕方ない。  それに、ヤツらは化け物だ。  人間と、化け物。  どちらが優先されるかは、目に見えている。  直に、全ての異形が施設に行くだろう。  そうなれば、この社会は元に戻る。感染源が居なければ、異形化する人も出ないだろうし、また平和が訪れるだろう。  そう思った。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加