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雪原照らす月
先程まで降っていた雪が止んだ。
微かに積雪の音が聞こえてきそうな、まさに静寂という言葉が似合いそうな銀の森。
真円の黄金の月から注ぐ柔らかな光は、樹氷を縫い獣の足跡さえ消えたまっさらな雪原を照らす。
ハァッハァッ
木陰から獣が飛び出し、雪上に不規則な足跡と椿のような色の血痕を残しずるずると走り抜けていく。
荒く息巻き、その牙の隙間からもまた赤黒く滴っていた。
獣はゆらりと雪にうずくまる。
僅かに持ち上げる頭の金の双眼には、ゆっくり確実に雪の中を踏む陰陽師の姿が映る。
北風に狩衣を靡かせ迫る様子はまるで、獲物を追い詰める虎。
陰陽師は両手を組み独股印を結んだ。
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