第七話 九歴 文月

2/28
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
 如月自身の体力、抵抗力、快復力も手伝って大事には至っていないが、それでも、動ける様になるまでには少々月日を必要とするらしい。  彼女の欠落はクエスト・ガイド協会としてはかなりの損失となるが、背に腹は代えられない。  彼女には完全に回復してもらって、また活躍してもらいたいのだ。  今無理させて、潰してしまう事などありえないのだ。  だから協会の方も彼女の休息を認めるしかなかった。  協会の方はその穴埋め作業で右往左往していた。  卯月の方はクエスト・ガイド協会のトップを走っていた姉に代わり、自分達がクエスト・ガイドという職業を盛り上げていこうと改めて思うのだった。  クエスト・ガイド――冒険者を案内する職業。  冒険者よりも前に未開の地に足を踏み入れ、情報を手にしなければならない過酷な職業。  冒険者達より目立たなく、どちらかと言うと日陰の職業だ。  それに反して、冒険者よりも危険が伴う職業でもある。  そして、人間が住む地域に危険が及ぶ時は体を張って壁にならねばならない。  クエスト・ガイドとはそういう職業だ。  やりがいを感じなければ出来ない職業と言える。  姉、如月は人類の盾となり、負傷した。  出現したら最後とも言われるΩランクのモンスター3匹を相手にして。  無茶でもなんでもやるしかなかった。  深手を負ったが何とかなった。  いや、何とかしたのだ。  そして、人類の危機はとりあえず、回避された。  だが、また、いつ未曾有の危機が訪れるかも知れない。  その時が来てしまう前に卯月達もスキルアップしていきたい所だった。  【卯月クエスト・オフィス】の社長として、従業員達を引っ張って行こうと卯月は新たに決意するのだった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!